【2022年度原子力防災訓練監視行動報告】

■玄海原発反対!からつ事務所 北川浩一

唐津市UPZ住民の一人として避難訓練に参加したので体験を報告いたします。

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・訓練日時 10月29日(土)10時半~15時

・訓練想定 感染症流行の中、県内で発生した地震(午前7時震度6弱)により、原子力事故が進展し全面緊急事態に。バスで避難所へ向かう。

・対象 自家用車避難が困難な唐津市UPZ住民31人(60~70代男女)

・集合場所 唐津市内中学校校庭

・車輌 大型バス3台

・支援者 1台に4名(一般職2名、保健師1名、防災士1名)、パトカーの先導

・行程 10:30出発

10:45 安定ヨウ素剤配布(バス内)

     トイレ休憩(道の駅)

12:30 避難退域時検査(バス3台で2名予定)

13:00 避難所(佐賀市小学校)にて原子力講話

 

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●集合場所 支援者 私服、使い捨てガウン着用の市職員混在(タイベックスーツなし)

パトカー乗員通常服

問題点 被ばく下の屋外待機、現状報告なし、簡易測定器なし。バス到着までのマニュアルなし(バス内で検温・個人情報の記入)

●バス車内 シート前後をアクリル板で簡易遮断、外気導入モード、検温

問題点 外気導入不可、簡易トイレなし、オムツなし、ペット用ケージなし。飲料水なし、放射能簡易測定器なし、AEDなし、ベッドスペースなし。 救急薬なし。状況報告(事故進展度、外気放射能濃度、風向き、避難先情報等)なし。

●安定ヨウ素剤 保健師(看護師)による簡易説明と飴玉配布、服用説明。。

問題点 現物提示なし、服用放射能基準不明、服用時の飲料水なし。

●トイレ 予定の道の駅コロナ発生で使用不可(想定内)。さらに隣接施設に降車するも使用不可(想定外)、次の道の駅へ

問題点 降車時の注意(外気の安全性確認)なし、測定器要、車内簡易トイレ要

●放射能汚染検査 人:全身(バス1台で代表1名、テント内)。車輌:(正面、側面、タイヤ側面)

問題点 代表1名不可(避難所汚染持ち込みの可能性)テント不可、着替え対策

車輌下部、タイヤ底面測定要

●除染 ウェットティッシュ払拭

人:4万cpm*超過部位をウェットティッシュで4回払拭

問題点 体の広範囲対策不明(私は手の甲に5万cpm被曝想定)、払拭の有効性、着替え場所と衣類要。汚染車両の管理と代替輸送対策。

●検査員

問題点 使い捨てガウン、スクリーンマスクで当人の汚染を防げるのか疑問

●検査結果 被曝量(除染前後)、バックグランド値

問題点 検査後証明書を求めたところ、「バスに戻る(避難所入所)ための証明です」と、不可。被曝証明は今後私に起こるかもしれない事への唯一の証明。福島の被ばく者が一番困ったことですと交付依頼するも拒否。他の職員「記録は保管する。請求があれば知ることができる」と回答。

 最新の検査・除染マニュアル(2022.9.28)では証明も結果保存もしない。当然、甲状腺被爆*をチェックする意図もなくなったものと思われる。

*1.3万cpmが1歳児甲状腺等価線量100mSv相当

●講話 佐賀県放射線技師会副会長(佐賀医大教授)による講話

問題点 専門家による真摯な話を期待したのだが・・・。国の安心安全神話に準拠した内容。

講話後に100mSvの問題、内部被ばく、国の原発政策が根拠とするICRP、アンスクエアの科学的信ぴょう性について会話するも疑問を感じておられない様子。国の副読本に沿ったレベルの講話。

 

★まとめ

 前日に離島訓練視察を断念、急遽思い立ち押しかけ参加。バス内で被曝検査を希望して受けることができ得難い体験ができた。

 結果は、安易な想定と対策しかおこなわれていない現実に驚く。毎年積み重ねて完全にしていく・・・言葉だけの無責任体制。主催者にも参加者にも明日起こるかもしれないという緊張感は感じられなかった。

 行程中を通じて情報不足を痛感、自分の置かれている状況がつかめない不安に曝される状態になると思われた。

 退避時検査にみられる目的、基準値、除染方法など以前より後退していると思われる。被ばく容認の避難計画であるならば、全員の被ばく測定と証明は最低限の住民の権利だと思う。このスクリーニング制度では避難所の放射能汚染(4万cpm)は避けられないと思われた。また4万cpm設定の科学的根拠を知りたい。

 避難途中の病人の発生と対策、車内時間長期化時の対策なども考慮すべきだ。大病院の避難を想定するだけで暗然とする思いであった。


■ 江口美知子

 今回は、佐賀競馬佐賀場外発売所(佐賀市大和町)で行われた、唐津市(二タ子1丁目地区)からの避難住民等に対する避難退域時検査訓練(原子力災害医療対策訓練)」を見学した。

 

 こんなずさんな訓練でいいのか、と思う問題点が多くあった。

・住民の待機テントは屋根のみで囲いはなく、隣で車の除染がされ、当日は特に風が強かったので除染した放射性物質が飛んで、彼らは不用意な被ばくをしていた状況だった。

・車の除染場はシートを敷いたのみで囲いは全くない。周りの住民も被ばく可能性があるであろうという状況。

・検査場周辺住民にはおろか、避難訓練の新聞記事が当日の佐賀新聞に掲載されていなかった事から県は住民への周知をするつもりがないと感じた。

・当日の放射線測定線量の基準値は40,000cpm。福島事故時は13,000cpmだったが、事故発生により緊急時という事で100,000cpmまで上げられた。現在はなぜか40000cpmだけどこの値には内部被ばくは含まれない。玄海の事故の時も何cpmにあげられるか、不安しかない。被ばく証明も発行してくれないという。

・区別されるべき車の入り口と出口が同じ場所に設置されていた。

 会場は見渡せるくらいの広さの場所。放射線測定ゲートがバス用と自家用車用が用意されていて線量測定。運転手は乗車したまま何やら質問をされ(2-3分)、そのまま奥へ移動。ゲートでの線量が低い車は、住民の測定は行われず住民を乗せたまま駐車場で停止。線量が高いと確認された車体は再度測定機で線量測定、住民は会場真ん中あたりに設置された住民用テント(囲まれていない屋根のみ)で降ろされ線量測定等などを行っている様子。

 車はそのまま大きく敷かれたシートの上に移動。自衛隊員がガイガーカウンターの様な機械2台でワイパー付近とタイヤの腹の部分を測り、タイヤの腹をウエットティッシュで一拭きするとダストボックスの中に捨てた。バケツの中の乾いた洗車ブラシは使われなかった。

 

 訓練終了後、現場統括責任者という県医務課長に話が聞けた。

・車の屋根の上は測らない。「国がそう決めているから」。

・ガラスの部分を拭かなかったと指摘すると、「線量が多くなかったから」。

・ウエットティッシュで拭いてもタイヤの溝に残らないかと聞くと、「だから拭いた後には必ず線量がなくなるまで確認する」と回答。

・除染作業中、シートを敷いただけで、埃は飛んで拡散する。放射能を広げない意図が感じられないと聞くと、「シートに落ちた土等は厳重に管理する。シート自体も廃棄になるだろう」との事。気にする事が違うのでは?

・会場の簡易トイレの設置がみられなかった。「場外馬券場のトイレを使う事が出来るのでいい」との返事。着いたばかりの人と除染をした人が同時に使う事もあり得るのでは?想定が甘すぎると感じた。