【「人に迷惑」を与えるな!7/12九州電力本店交渉報告】

7月12日、九州電力本店と交渉の場を持ちました。

池辺社長がコンプライアンスの基本精神として「人に迷惑をかけない」「社会に損失を与えない」ことを社長宣誓で掲げたことに対して、「社会に損失を与え、人に迷惑と差別を生み出すのが原発」として、ただちに止めるよう求めました。

溜まり続ける使用済み核燃料・使用済みMOX燃料問題や、規制員会が基準地震動の再審査を求めたことなど16点の質問を出しました。

 

前回(昨年10月6日)の質問に対して、九電は9か月も経ってやっと回答しましたが、今回も人数制限(20人まで)、時間制限(80分)、撮影制限(冒頭以外は禁止)をかけ、文書回答は拒否。私たちは毎回ですが、コンプライアンスに則って誠実に対応するよう求めました。

九電の口頭回答は「今後も努力する」「国の基準を遵守する」「今は回答を持ち合わせない」などというばかり。しかし、粘ってやりとりをする中で――

 

市民:『避難計画を支援する』というが、加害者としてどう責任をとるのか?

九電:加害者とはどういう意味でしょうか。

 

市民:放射能汚染水はどうするのか?

九電:福島のように放射性物質をタンクに溜めてというような事まで想定していない。

 

――など、九電の住民軽視の姿勢や、今なお「安全神話」の中にいる実態が露わとなりました。

私たちは、こうした事実を、さらに多くの市民に知らせていきたいと思います。

 

私たちは今回の質問に対する回答の場を早急に設けるよう求めました。

本店ビル前では、交渉の間、仲間が旗を立ててサイレントアピールをしました。

 

<参考>昨年10/6九州電力本店交渉報告

 

https://saga-genkai.jimdo.com/2020/10/06/a/


要請・質問書

社会に損失を与え、人に迷惑と差別を生んだ原発事故

核燃料破綻サイクル、玄海原発を直ちに止めよ

2021年7月12日

九州電力(株)代表取締役社長  池辺和弘  様

 

 福島原発事故から10年、チェルノブイリ原発事故から35年経つ。福島では溶け落ちた核燃料の全容はつかめておらず、放射能汚染水は日々溜まり続けている。その汚染水を、国民をはじめ世界の反対があるにもかかわらず、「基準値内に薄めるから大丈夫だ」と愚かなごまかしで海洋投棄を決定した。国内外の批判は多く、3年後の実施はままならないはずだ。日本は原発事故で放射性物質をまき散らし、その後に及んで海洋まで無用な汚染をしようとしている。規制委員長が断言する「安全とは言わない」原発の再稼働などあり得ない。

 

 先般、池辺社長は「コンプライアンスとは『人に迷惑をかけない』『社会に損失を与えない』『不公正な行動をとらない』が基本精神。この実践を約束する」と社長宣誓を述べた(2020年6月)。しかし、今の九州電力はこの宣誓とはほど遠い。私たちとの前回の交渉で、原発事故の後始末や廃炉作業の問題にふれ、九電担当者自ら「原発はトイレなきマンションといわれている」と発言した。九州電力は、この先何十万年、何百万年と未来永劫にわたる管理を余儀なくされる毒物を作り出した当事者であることを真摯に認識すべきである。

 

 九州電力をはじめ電力会社は「国の核燃料サイクルは生きている」と言う。しかし、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出して再処理するこの政策は、東京電力福島第一原発事故後に「原型炉もんじゅの廃炉」の決定、完成遅れ25年以上となる六ケ所再処理工場は国が新規制基準による許可を強引に与えても実稼働する見込みは全く立たず、プルサーマルは停滞、行き詰りの「破綻状態」にある。国費税金の無駄遣い、溜まり続ける核廃棄物に原発のリスクは高まるばかり、国策を「錦の御旗」にし、一企業の営利のために住民の命と暮らしを脅かすことは決して許されない。

 

 玄海原発が稼働する限り、たとえ事故を起こさなくても日常的に環境の中に放射性物質を放出し続けている。原発事故が起きれば放射性物質は偏西風に乗り、日本はもちろん地球を放射能で汚染する。九電自ら責任を持たず自治体に丸投げした原発避難計画は住民に被ばくを強いるものとなっている。

 住民には、原発で起きていることが自分たちの命とくらしに直接影響を及ぼすとはほとんど知らされていない。その加害者は九州電力であること、被害者は私たち住民であることは紛れもない事実である。まさに「住民に迷惑をかけ社会に損失を与えている」のだ。池辺社長のコンプライアンス宣誓にまったく反するものである。

 

 九州電力は、同業者の東京電力第一原発事故を真摯に受け止め、消費者である住民が安心して暮らせる社会の一企業として、科学的根拠を示して住民が納得いく説明をすべきである。私たちは、これまでの交渉で安心できる説明は受けていない。

以下、要請と質問に誠意ある回答を求める。

 

【 要請事項 】

(1)玄海原発をただちに停止すること。

 

(2)企業として自ら掲げたコンプライアンスに則って、質問・要請・意見交換の場に於いて、以下の点について真摯な対応を求める。

① 参加人数を制限しないこと。

② 動画・写真の撮影の制限をしないこと。

③ 申し入れ・質問書への回答の日時・場所設定を1か月以内に行うこと。

④ 回答の際には、文書回答と資料の準備をすること。

 

 

【 質問事項 】

(1)使用済みMOX燃料について

 充分冷えて動かせるまで300年かかると原子力規制庁も認めた使用済みMOX燃料が玄海原発3号機から取り出された。しかし、管理方法についても、サイトに何年置いておくか、その後どうするか、九州電力自身も分からないとの無責任な回答を前回得た。現実に使用済みMOX燃料が出され、ますます住民の不安が増している今、再度質問する。

①使用済みMOX燃料の管理方法、サイトに何年置いておくか、その後どうするのか。九電は被害を受けるかもしれない住民の身になって回答をして下さい。

 

(2)仏、英など海外に所有する我が国のプルトニウムについて

 池辺社長は、日本の各電力会社が所有するプルトニウムを使ったMOX燃料によるプルサーマルを、九電をはじめ各社で融通しあって積極的に利用促進しようと提言した。それが「プルトニウムを作り出した者の責任」(2021年5月1日付佐賀新聞)などと言うが、行き場もなく処理方法も明言できない「使用済みMOX燃料」の危険性を放置しているのは無責任極まりない。

②貴社は私たちとの交渉で、プルトニウムについて「自社で出た分は自社で消費するというのが大前提の基本方針」と回答した(2019年4月15日)が、この「大前提」をいつ反故にしたのか。毒性の強いプルトニウムを使ったプルサーマルに不安を持つ住民に説明をしたのか。

③プルサーマルを玄海3号機で実施して1年間でプルトニウムを何十パーセント、何トン減らすことができるのか。

 

(3)大飯原発3号機の予期せぬ配管の亀裂について

 昨年末、関西電力の大飯原発では一次冷却系配管で検査でも分からなかった亀裂が発見されて再稼働不能となった。原因は、1990年代に為した溶接技術に問題があって入熱量を掛け過ぎたために今回のような亀裂が進んだと報告された。技術未熟の溶接士のせいだという。また、高浜原発では、配管への異物混入が原因の配管損傷が見つかった。

 原発1基の配管メンテナンスは、最重要な配管でもその総数から10年で1/4しか検査していない。検査機器の精度や技術が進化しても今回のような配管損傷が後を絶たず、同じ加圧式原子炉である玄海原発でも2018年に3号機配管穴あき事故が起きた。

④玄海原発では問題はないか。大飯原発と高浜原発の亀裂や異物混入の発覚後、点検をしたのか。

⑤自社100%定期検査の実施となって一部の隙をも見逃さない検査のやり方を具体的に説明されたい。

 

(4)三菱グループの不正行為問題について

 35年以上にわたって行われていた三菱電機の不適切な検査、不正偽装するプログラムの7つの手法等が明らかになった。2017年10月に発覚した三菱UFJフィナンシャルグループの神戸製鋼のアルミ・銅製品のデータ不正改ざん問題が想起される。折しも2020年から定期検査が原子力規制委員会の手を離れて事業者に一任、報告書のみの検査制度になったばかりだ。プロの検査機関から電力会社の不正隠ぺいに繋がるとの批判があった制度だ。九州電力(製造者たる対三菱重工を含め)の営利のために、検査を省きデータ改ざんするなどあってはならない。

⑥玄海原発では三菱電機の製品は中枢部で使われていないか、調査したか。どこに使っているのか

⑦同じグループの三菱重工製造の玄海原発では、同様の不正はなかったか。

⑧不正が起きないための対策、体制の詳細を回答されたい。

 

(5)原発事故時の避難について

⑨原子力災害対策特別措置法に則って作成された「原子力防災のてびき」には屋内退避時、避難時共に住民は被ばくすると記載されている。放射能を出す当事者である九州電力の責任において、避難計画の言及する被ばく量なら住民は受けていいと考えているのか。

⑩放射能を出す当事者として、現在の 「原子力災害避難計画」に実効性があると考えるか。その根拠を示されたい。

⑪私たち住民が、無用な被ばくなど絶対にしたくない事を知りながら、なぜ原発を稼働させているのか。

 

(6)12ヘクタールの土地利用について

 玄海原発敷地に隣接する12haの土地では「重大事故時の資機材置き場」造成のためとして、工事が進んでいる。工期が「平成28年4月1日~平成31年3月31日」から「平成28年4月1日~令和5年3月31日」に4年間も伸びた。

⑫工期はなぜ延長したのか。何をつくっているのか。

 

(7)脆性遷移温度の監視片について

 前回交渉で脆性遷移温度の監視片は、3号機は残り3個、4号機は残り4個と回答を得た。監視試験には、引張試験、シャルピー衝撃試験、破壊靱性試験があるが、試験片形状は各試験によって異なる。

⑬残りの3個/4個の試験片はどの試験用の試験片として準備されているのか。それぞれどの温度で試験するのか。一度使用すれば、他の試験では使えないが、試験片が不足したら、どうやって監視するのか。

 

(8)基準地震動の再審査について

 玄海原発の耐震設計の目安「基準地震動」について新規制基準の改正に対し、九電は「玄海は変更不要」としたが、規制委は7月8日九電の主張を退け、玄海3号4号の再審査を正式決定した。

⑭追加の耐震工事が必要となった場合、配管や支持構造物の補強は必須と思われるが、既に耐震工事追加が決まっている川内原発を例にとれば、他にどんな補強が必要となるか。原子炉及び格納容器の補強はしないのか。

⑮追加工事等に掛かる金額規模を回答されたい。

⑯再審査が必要となったのに、なぜ止めないのか。

 

 

(提出者)

あしたの命を考える会/今を生きる会/風ふくおかの会/玄海原発反対からつ事務所/原発知っちょる会/原発を考える鳥栖の会/さよなら玄海原発の会・久留米/戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会/脱原発電力労働者九州連絡会議/たんぽぽとりで/怒髪天を衝く会/東区から玄海原発の廃炉を考える会/福岡で福島を考える会/プルサーマルと佐賀県の100年を考える会/玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会

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20210712九電要請質問★.pdf
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◆報道