【「なぜ、あなたたちは私たちに『するな』ということをしているんですか?」/来年7月結審へ!7/12佐賀地裁の報告】

 

2日前の「福岡高裁抗告審不当決定」への怒りも冷めやらぬ7月12日、玄海原発全基差止裁判第30回口頭弁論と、行政訴訟第22回口頭弁論が佐賀地裁(達野ゆき裁判長、田辺暁志裁判官、野口宏明裁判官)で開かれました。

各地の仲間が傍聴にかけつけてくれ、理不尽・不合理・不条理な司法に対する怒りを共有し、原発を止めるまで闘うという意志を再確認しあいました。
福岡市の本河知明さんと鹿児島市の井ノ上利恵さんがそれぞれ素晴らしい原告意見陳述を行いました。

 

裁判の進行では来年7月17日の結審までの日程(口頭弁論4回、プレゼン2回、証人尋問2回が確定し、来年度内には判決が出ることとなりました。
玄海原発を止めるために、何としても勝利しなければなりません。
そのために傍聴席をいっぱいにして、裁判官に私たちの「原発いらない」という意志を示しましょう!
法廷の外で世論をどんどんつくっていきましょう!
みなさんのご注目とご支援を引き続きよろしくお願いします。

 

◆今後の法廷期日(佐賀地裁)
    9月27日(金)14:00~行政訴訟(第23回) 14:30~全基差止(第31回)
           ※13:20~入廷前アピール 13:30~進行協議(弁護団)
            15:00~記者会見・報告集会
   12月13日(金)14:00~行政訴訟 14:30~全基差止
2020年2月21日(金)14:00~行政訴訟 14:30~全基差止
    4月10日(金)10:00~証人尋問(行政)
    4月17日(金)13:00~証人尋問(全基)
    7月17日(金)14:00~結審(行政・全基)

 

<法廷プレゼン>原告のみ傍聴可
 10月1日(火)13:10~夕方
 10月25日(金)11:00~夕方

※この活動は一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの助成を受けています。


陳 述 書

2019年7月12日

佐賀地方裁判所 御中

住所 福岡市早良区
氏名 本河 知明

(1)
 2012年1月から福岡市議会議員の秘書という仕事をしております、本河知明と申します。この仕事に転職することを決意した大きな要因は、まさに福島第一原発事故にありました。
 今の仕事に繋がる原点的な体験が2つあります。1つは、5歳から4年間過ごした長崎での平和教育。当時、長崎にある原爆資料館にも行き、原子爆弾の恐ろしさを学びました。もう1つは、11歳のころNHKで放送されていた「地球大紀行」というドキュメンタリーです。当時問題になっていた酸性雨、砂漠化、温暖化、オゾンホールなどの環境問題を知り、衝撃を受けました。特に、「地球の誕生から46億年のうち、人類の歴史はおよそ300万年、さらに人類が文明を築いてきたのはおよそ1万年に過ぎない」という時間スケールでの視点を身につけたことは、今でも生きています。「地球の歴史から見れば人類は小さな存在である」、「人類だけでなく、他の生物に悪影響を及ぼさないようにするにはどうしたらいいか」は、私が常に考える視点であり、政治に携わる者のみならず、人類全体で共有すべき視点だと考えています。

 

(2)
 さて、この法廷で私が述べたいことは、「原子力行政の歪み」についてです。

(2-1)
 まず、福島第一原発事故の原因はいまだ究明されていません。政府事故調などでは否定されていますが、国会事故調では地震動による重要機器の損傷の可能性が指摘されています。また「新潟県原子力発電所事故に関する検証総括委員会」でもこの検証を継続中です(2018年2月16日開催の会議資料より)。事故の徹底究明がなされていない中、「福島を繰り返さない」ための対策が立てられるのでしょうか?
 2012年6月、原子力規制委員会設置法が成立、2013年7月に新規制基準が施行されました。政府は「世界一厳しい審査基準」と言いますが、新規制基準からは「原子炉立地審査指針」がなくなりました。これは1964年に作られた指針で、どこなら原発を設置してもよいか、どこに建設をしてはならないかを定めた重要な指針でした。政府は、この指針を残したままだと原発の再稼働ができなくなると考え、この指針をなくしてしまったのではないでしょうか。
また、新規制基準では、過去12~13万年間活動がなければ「活断層ではない」として審査していますが、アメリカでは活断層かどうかではなく「地表に影響を及ぼし得る地質構造」かどうか、地震学第四紀(約258万年)よりも古い地質かどうかで審査しています。原発から40キロ圏内に断層が発見された場合は、それが原発1キロ圏内で「地表に影響を及ぼし得る地質構造」として振る舞わないことを証明しなければならない、とされているそうです。
先日6月17日、福岡地裁で川内原発の火山審査をめぐる行政訴訟で、破局的噴火は「低頻度」とし、法令上考慮しなくてよいとして、原告らの請求を棄却する判決がありました。しかし、基準を超える地震や津波が起こる「超過頻度」について、アメリカでは10万年に1回起こりうるケースを想定することを義務づけています。これで本当に「世界一厳しい審査基準」と言っていいのでしょうか?

 

(2-2)
 私が住んでいる福岡市は、玄海原発から最も近いところで37キロ、天神付近だとおよそ50キロに位置します。これは福島第一原発と飯館村との距離に相当します。「事故時は屋内退避」という問題の多い内容ではありますが、UPZ圏外(30キロ圏外)である福岡市もいちおう避難計画をつくっています。
UPZ圏内(30キロ圏内)で行なわれている避難訓練を何度か見学したことがありますが、今の避難計画は机上の空論です。玄海原発で事故が起きた場合、避難に要する時間は短く見積もって20時間、長いものだと40時間という試算もあります。避難計画の責任主体は自治体となっており、国や電力会社の責任は問われません。もちろん、新規制基準の対象にはなっていません。事故が起きたら、私たちは被曝を前提に避難せざるをえないのです。

 

(2-3)
私にはいま4歳と2歳の娘がいます。娘たちがまだ生まれる前でしたが、2012年に福岡市東区で「放射能市民測定室・九州(Qベク)」を立ち上げ、食品や土壌に含まれる放射線量の測定を行なってきました。
福島第一原発事故の後、水や食品の基準値が大幅に緩められました。放射性セシウムについて、水の場合は、それまでの平均値が0.00004Bq/Lだったものが10Bq/LまでOKに、お米の場合は、0.012Bq/kgだったものが100Bq/kgまでOKになりました。それぞれ25万倍、約8300倍に緩められたのです。今もその基準は変わっておらず、我が家の買い物の際は、産地を気にしながら食品を購入しています。
今回の訴訟の直接的な争点ではありませんが、実は原発事故前から「大気汚染防止法」でも「水質汚濁防止法」でも「土壌汚染対策法」でも放射性物質は適用除外とされてきました。そして、「環境基本法」の第13条で、放射性物質による各種汚染の防止については「原子力基本法その他の関係法律で定める」としながら、国会や政府は何も定めてこないまま、福島第一原発事故が起きてしまったのでした。これらの法律は、事故後どうなったのか。実は、2012年6月、この環境基本法から第13条が丸ごと削除されてしまったのです。
裁判官の皆さんにお願いしたいのは、現時点の法令だけをもって判決を下さないでいただきたいということです。都合の悪い条文を削除してしまったり、審査基準を緩めてしまったりしてきた原子力行政のあり方、歴史を踏まえて、判決を下していただきたいと思っています。

 

(3)
 私が大学および大学院で専攻していたのは物理学でした。26歳で大学院を中退し、まったく違う道に進みましたが、物理を研究してきたからこそ「科学の限界」も感じています。東日本大震災をはじめ、人類の想像を超えた自然災害が次々と起きています。私たちは地球に対して、自然に対して、もっと謙虚になる必要があると思います。
 1992年6月、ブラジルのリオデジャネイロで開かれた「地球サミット」と呼ばれる国際会議(環境と開発に関する国際連合会議)で、当時12歳だったセヴァン・スズキ(日系カナダ人)という女の子が世界のリーダーたちに向かってこんな発言をしました。
「どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。」
「学校で、いや、幼稚園でさえ、あなたたち大人は私たち子どもに、世のなかでどうふるまうかを教えてくれます。たとえば、"争いをしないこと"、"話しあいで解決すること"、"他人を尊重すること"、"ちらかしたら自分でかたづけること"、"ほかの生き物をむやみに傷つけないこと"、"わかちあうこと"、"そして欲ばらないこと"。ならばなぜ、あなたたちは、私たちにするなということをしているんですか。」 と。

 日本国憲法の第11条に「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民へ与へられる」とあります。「今だけ、金だけ、自分だけ」の政治のあり方に対し、司法の役割をぜひ果たしていただきたいと思います。未来へ「負の遺産」を残すことにしかならない原発については、即時停止の判決をお願いします。

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2019年7月12日 意見陳述 本河知明さん
20190712意見陳述本河知明●.pdf
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陳 述 書

2019年7月12日

佐賀地方裁判所御中

住所  鹿児島県鹿児島市
氏名  井ノ上利恵

 

 本日は、意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。

 

(1)
 私は、鹿児島市で薬剤師として薬局に勤務しています。
 2011年3月東日本大震災が発生した時、東京都北区に住んでいました。今まで経験したことのない大きな揺れが長い間続き、勤務していた薬局では棚から落ちた物が散乱し、交通はマヒし、暗い夜道を不安な気持ちで歩いて帰宅しました。帰宅後テレビから流れる信じられないほどの巨大な津波の映像にただ驚くばかりで、その時は原発の事など頭に浮かびませんでした。
 翌日起きてしまった原発事故。「日本は終わった」と思いました。ウソであって欲しい。そう何度も思いました。
 息子が生まれた年に起きたチェルノブイリ原発事故では、小児甲状線ガンの激増など大きな健康被害を引き起こしましたが、その放射能は国境を越え、海を越え8000km離れた日本にもやってきました。あの時原発事故の恐ろしさを知ったはずなのに、なぜ日本の原発を止める為に私は何もしなかったのだろう。心のどこかに「日本は大丈夫」、そんな気持ちがあったのだと思います。
 自分が暮らしている東京の電力を作っていた福島の原発が事故を起こしてしまった。本当にショックでした。
 事故の2ヶ月後から下痢が続くなど体調を崩し、6月下旬実家のある鹿児島に帰りました。鹿児島に帰ると下痢は治まりみるみる体調は良くなり、やはり東京にも飛散してきた放射性物質が影響したのではないかと思いました。

 

(2)
 あれほどの事故が起きたのだから、この国の原発が二度と稼働することはないだろうと思っていました。
 ところが、鹿児島にある川内原発が事故後最初の再稼働の候補に? 福島から一番遠い原発、県民の関心が低いと思われたのでしょう。反対運動を懸命にやりました。夜中まで続いた県議会の傍聴に行き、原子力規制委・九電・県が開催した住民説明会には3ヶ所行きました。
 しかし、再稼働を決めるのは、薩摩川内市長と市議会、県知事と県議会です。川内原発を再稼働させてしまえば、なし崩しに各地で再稼働が始まる。再稼働を止めたい一心で、運転差止めを求めた仮処分申し立ての原告となりました。 
 鹿児島地裁の審尋で、九電側は「再稼働が遅れれば一日当たり約5億5千万円の損害を被る」と賠償に備えた担保金の積み立てを私たち住民側に求めました。地裁は命じることはありませんでしたが、仮処分申請は却下されました。
 福岡高裁宮崎支部に即時抗告しましたが、一年後出された決定は、「どのような事象でも原子炉施設から放射性物質が放出されることのない安全性を確保することは、少なくとも現在の科学技術水準では不可能である。わが国の社会がどの程度の危険性であれば容認するかの社会通念を基準として判断するほかない」という信じられないものでした。
 安全性を確保することが不可能な原発がどの程度の危険性であれば稼働を容認するかは社会が決めるしかないという、本当に無責任な決定でした。社会通念を基準とし判断するのであれば、メディア各社の世論調査で常に原発反対が賛成を上回っている事を、裁判所はどう判断するのでしょうか。裁判所にとっての社会通念とは、住民ではなく、政財界の社会通念という事でしょうか。  あの福島の原発事故から何を学んだのだろう。
 今も「原子力緊急事態宣言」発令中です。
 フクシマ事故は、今生きている人間すべてがいなくなるほどの年数が経っても収束はしないと言われています。原発事故は、人間と自然が共存していた里山・川・海・空、そして生きものたち、その全てを被ばくさせてしまいました。 悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれない。もう二度と、原発事故は起こしてはいけない。

 

(3)
 熊本はこれまで、地震の起こりにくいところだと言われていました。現在の「日本郵便株式会社 九州支店」旧九州郵政局は、熊本市中央区にあります。旧九州郵政局を熊本にもってきた理由は、その為だと聞いたことがあります。しかし、3年前、その熊本で九州地方では初の震度7の大地震が発生しました。世界の大地震の20%は日本で発生しています。地震大国の日本は、いつどこで大地震が起きるかわかりません。熊本地震の震源地がずれていたらと思うと、本当に恐ろしかったです。

 

(4)
 私は、安定ヨウ素剤の学習会を各地で開いています。
 緊急の事態が起きた時、原子炉施設から放出される放射性物質による内部被ばくを防ぐことができるのは、安定ヨウ素剤服用による放射性ヨウ素だけです。チェルノブイリ原発事故が起きた時、国民にヨウ素剤を配布したポーランドでは小児甲状線疾患の患者がほとんど出ませんでした。このことをたくさんの方に知ってもらい、安定ヨウ素剤がいかに必要なものかを理解してもらう為です。原発再稼働を容認しているのでも、諦めているからでもありません。原発は稼働していなくても、そこにあるだけで危険だからです。稼働中ならその何倍も危険です。
 行き場のない使用済み核燃料は、玄海原発でも2021年度には貯蔵プールの容量の9割を超える試算が示されています。玄海で大地震が起きたら、どうなるでしょう。

 

(5)
 国内に111ある活火山のうち、九州には、17もの活火山が集まっています。阿蘇山、霧島山、桜島、口永良部島は、今も活発に活動しています。九州の火山が活発なのは、それぞれの火山が「日常的な」活動を繰り返しているからだそうです。
 巨大噴火を起こすカルデラ火山は、日本列島に10個程度あり、その半数が九州とその近海に位置しています。 阿蘇・姶良・阿多・加久藤・鬼界。この巨大カルデラのどこでいつ噴火が起きてもおかしくない状況にあると言われています。そのどこかが噴火した場合、関西でも50㎝、首都圏で20㎝、東北地方でも10㎝の火山灰が降り積もる。これは決して「脅し」ではないと専門家は語っています。
 鹿児島では桜島の日常の噴火で、降灰の厚さ0.5㎜以下でも市電が脱線した事があり、JRも電車の位置情報入手ができず信号の誤作動の可能性がある為、運転を見合わせます。この何百倍、何千倍もの降灰があればどのような事が起こるか、想像はつくと思います。桜島の大正噴火で桜島と大隅半島は陸続きとなり、その際の降灰で3mの鳥居が2mも埋没してしまった神社が「爆発の猛威を語りつぐ鳥居」として桜島には残されています。
 地震・火山噴火・台風・豪雨など自然災害がいつ起きるかわからないこの国で、命にかかわる事故となる原発は、一日も早く止め、廃炉作業に取り掛かって欲しいです。

 

 今日、この場にいる全ての方が、「原発は安全ではない」と思っているはずです。
 風・太陽・地熱。
 この地球の恵みを利用した電気を使って、暮らしていきませんか。原発で働く被ばく労働者のいない社会で、暮らしていきませんか。そんな社会が一日も早く来ることを願っています。

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2019年7月12日 意見陳述 井ノ上利恵さん
20190712意見陳述井ノ上利恵●.pdf
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◆裁判書面(行政)

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20190628行政被告22準書●.pdf
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20190628行政被告23準書●.pdf
PDFファイル 5.3 MB
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20190704玄海行政原告準19●.pdf
PDFファイル 1.3 MB
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20190704玄海行政原告準20●.pdf
PDFファイル 700.9 KB

◆裁判書面(全基)

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20190704玄海全基原告準22●.pdf
PDFファイル 370.4 KB

◆報道