【避難所の4割が自然災害危険区域!~玄海原発避難計画に関する佐賀県知事要請行動報告】

12月28日、危険区域にある避難所等を早急に見直すことと、原子力避難計画の現状を住民に周知徹底することを求めて、山口祥義・佐賀県知事への要請行動を行いました。
来年2月2日に実施される玄海原発原子力防災・避難訓練の前に県に伝え、回答を得たいことから、年末ぎりぎりの取り組みとなりました。11人が参加しました。

 

●カウントされていなかった離島の「土砂災害特別警戒区域」
佐賀県内で玄海原発事故時に避難所として指定されている515施設のうち212ヶ所(41%)、4割超が自然災害危険区域(土砂、津波、洪水)にあることが、私たちの調べで分かりました。避難集合場所は561施設のうち112ヶ所(20.0%)が該当しました。

中でも、離島には海路避難が困難なことから島内に放射線防御施設がつくられていますが、原発から6キロの向島(むくしま)は、防御施設となっている向島分校が「土砂災害特別警戒区域」にあります。このことは国会議員の調査でも指摘され、2年前に新聞報道もありましたが、県の作成した一覧表には記載がありませんでした。このことを質すと、県担当者は「作成した唐津市のミスだ。お詫びする」と回答。県がいかに状況を把握していないか、危機意識をもっていないかが判明しました。(島の防御施設は集合場所にカウントされているので<避難集合場所561施設のうち113ヶ所(20.1%)>となります。)

 

●原発は自然災害と違って、止められる
唐津の仲間がチラシ・ポスティングで訪ねた時の写真を示しながら「分校の裏が崖になっている。海側の岩は風化して浸食している。いざという時にどうするのか」と質すと、
県担当者は「その後、特に対策をとっていない。全部が区域でなく、敷地の一部が入っているだけなので…2階が安全確保されるなら使うなど、その時々で判断するしかない...」。
私たちは「住民は不安がっている。だけど、どうにもならないと、諦めている。そこを掬うのが県の仕事でしょう。すべての施設について早急に見直してください。どうしようもないなら、原発は自然災害と違って止められるのですから、止めてください。知事に根源を絶つように言ってください」と求めました。

 

●住民には、ほとんど何も「知らされていない」
また、昨年の避難訓練についての国の報告書で「地区ごとの説明会を推奨する」と指摘されたことについて、この1年で何をしたかを聞くと、何もしていないことが分かりました。避難訓練を実施した地区数(数か所程度)や、避難計画対象の地区数(597地区)の概数も答えられませんでした。訓練の参加者は極めて限定され、避難計画自体も住民にはほとんど知らされていないのです。
放射能の危険や避難計画の現状について、県が主体となって住民に周知徹底することを求めました。

2018年の全国での土砂災害発生件数が過去最多の3451件だと昨日報道されました。原発事故との複合災害になる可能性が常にあります。住民の命を守れる避難計画ができないなら、原発を止めるべきです。

 

●2/2原子力防災避難訓練の見学・監視を!
年が明けて2月2日に原子力防災・避難訓練が予定されています。詳細が公表されていないので、より多くの住民に参加してもらえるよう、ただちに公表することもあわせて要請しました。
具体的な問題が可視化される避難訓練をみんなで見学・監視し、それを基に九電や国、県、市町に対して粘り強く働きかけ続けていきましょう。

 

<原子力防災避難訓練・事前学習会に参加を!>
 1月12日(土)13時半~裁判の会・月例“そいぎミーティング”の中で(福岡市、オリーブの家)
 1月25日(金)19時~玄海原発反対からつ事務所の学習会の中で(唐津市、からつ事務所)


要請・質問書
玄海原発事故時の避難所の4割が自然災害危険区域になっている
これでは住民の命を守れない

2018年12月28日

佐賀県知事 山口祥義様

 

玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
玄海原発反対からつ事務所/原発を考える鳥栖の会/今を生きる会/原発知っちょる会
風ふくおかの会/戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会/たんぽぽとりで
東区から玄海原発の廃炉を考える会/福岡で福島を考える会/あしたの命を考える会/怒髪天を衝く会

 

 

 近年、全国的に豪雨、台風、地震、火山などの自然災害が頻発し、住民に甚大な被害が出ています。東日本大震災は、地震、津波に加え、福島第一原発事故による放射能災害という複合災害となりました。原発事故は複合災害として起こる可能性が常にあります。
 私たちは4年前、玄海原発事故時に30キロ圏住民の避難先として指定された避難所が自然災害危険区域(土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域、津波浸水想定区域、洪水浸水想定区域)にある問題を調査したところ、佐賀県内全避難所538ヶ所のうち65ヶ所(12%)が危険区域にあることが分かりました。
現在の状況をあらためて確認したところ、全避難所515ヶ所のうち212ヶ所(41%)、4割超が危険区域にあることが分かりました。集合場所についても全561ヶ所のうち112ヶ所(20%)が危険区域にあることが分かりました。

 また、超党派の国会議員連盟「原発ゼロの会」の調査によれば、離島や5キロ圏の福祉施設などに設置された「放射線防御施設」のうち、唐津市向島の入野小学校向島分校は土砂災害特別警戒区域にあります。このことは、県の資料では記載がありませんでした。

 

 「佐賀県地域防災計画 原子力災害対策編」では、「県は玄海町、関係周辺市に対し、災害の危険が切迫した緊急時において安全が確保される指定緊急避難場所及び避難生活を送るための指定避難所をあらかじめ指定し、住民への周知徹底を図るよう助言する。」と書かれていますが、これら危険区域にある避難所は「安全が確保」されているとは言えません。このままでは、原発事故が複合災害となって現実のものとなった時、安全な避難場所にたどり着くまでに混乱の中で、拡散された放射能により住民は被ばくを強いられることになります。毎時500マイクロシーベルト超という高線量の中での避難なのです。
 9月県議会において危険区域問題の現状を質問されると、県危機管理局長は「県として把握していない。今後把握したい」と答弁しました。それから3か月経っても回答がなく、ようやく一覧表が議員に示されました。しかし、「住民への周知徹底」はまったくなされていません。
 来年2月2日に今年度の玄海原発防災・避難訓練が実施されますが、これらの問題について何の改善もされないままで訓練が行われるなど、言語道断です。
 住民を守れる安全な避難計画が確立するまでは、原発の稼働は認めてはなりません。

 以下の要請と質問に対して、2週間以内の回答を求めます。

 

 

【 要請事項 】

 原発は問題が山積みのまま、住民はリスクだけを強いられます。加害当事者は九州電力です。

原発事故が起きたら逃げなければならないこと、被ばくを強いられることについて、県民にはほとんど知らされていません。こうした中での原発稼働は許されるものではありません。
 自然災害は待ってくれませんが、原発は人間の手で止められます。

 

(1)災害危険区域にある212ヶ所の避難所と112ヶ所の集合場所について見直し、どう対処するのかを早急に示すこと。

 

(2)原子力避難計画の現状を住民に周知徹底すること
避難元、避難先は全県下にわたっています。全県民を対象に、原発の危険性や原子力避難計画について、町内会などできる限り小さな単位で地区ごとの説明会を開催すること。
昨年の避難訓練についての内閣府報告書では、住民アンケートを踏まえ、「市町や地区ごとに説明会をすることを推奨する」と「改善提案」がされています。

 

【 質問事項 】

向島の放射線防御施設となっている入野小学校向島分校が、国の資料では土砂災害特別警戒区域となっていますが、佐賀県の資料ではそのような記載はありません。実際はどうなっていますか。

 

ダウンロード
2018年12月28日 佐賀県知事宛 危険区域についての要請質問書
要請・質問書:玄海原発事故時の避難所の4割が自然災害危険区域になっている これでは住民の命を守れない
20181228知事要請危険区域●.pdf
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要請書

原子力防災避難訓練の内容を直ちに公表してください

2018年12月28日

佐賀県知事 山口祥義 様

 

 11月29日、県HPで「平成30年度佐賀県原子力防災訓練を実施します」と公表されました。
 しかし、「訓練内容、時間、場所等の詳細については、現在調整中ですので、後日決定次第お知らせします。」ということで、詳細が現在もわかりません。
 毎年、直前にならないと詳細が公表されない状態が続いていますが、より多くの県民に避難訓練に参加し、避難計画を知ってもらうためにも、早い段階での詳細な広報が必要です。

 訓練内容、時間、場所等の詳細について、直ちに公表するよう求めます。

 

ダウンロード
2018年12月28日 佐賀県知事宛 原子力防災避難訓練内容公表 要請書
要請書:原子力防災避難訓練の内容を直ちに公表してください
20181228知事要請訓練公表●.pdf
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