伊万里市長要請:市長「原発にたよらないで済むよう、市長としてできることを」

10月5日、玄海原発30キロ圏にすっぽり入る伊万里市に原発避難計画の問題で、盛泰子市議と伊万里市民を含め9人で要請に行きました。
今年4月の市長選で初当選し就任した深浦弘信市長は、直後のインタビューで原発に対して「個人としても市長としても反対だ」と、前市長のスタンスを引き継ぐ旨を明言しています。今日は市長本人に対応いただきました。伊万里市長との面会は初めてでした。
私たちは、原発をなくすために市民として裁判や伊万里市などでのチラシ・ポスティングなどの活動をしてきたことを紹介しながら、「自然災害と原発事故が重なれば住民の命は守れない。住民が安心し納得できる実効性のある避難計画を策定してください」と求めました。

市長は「原発については、報道されているとおりの姿勢だ。そのうえで、原発にたよらないで済むように、市長としてできることをやっている。小水力発電など再生可能エネルギーにも取り組んでいく」と話しました。
避難計画策定を義務づけられた市町は、押し付けた側の九電、国、県に対して、住民に寄り添ってモノを言う権利があります。市町が住民の命を守るため、私たちは情報を届け、原発をなくす方向に動いてくれるよう、声をあげ続けていきたいと思います。


要請書
自然災害と原発事故が重なれば住民の命は守れません
住民が安心し納得できる実効性のある避難計画を策定するよう求めます

 

2018年10月5日

伊万里市長 深浦弘信様

玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会 代表 石丸初美
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会 共同世話人 野中弘樹
玄海原発反対からつ事務所 代表 北川浩一

 

 2011年3月11日、東日本大震災は東京電力福島第一原発事故を引き起こしました。2016年4月には震度7が2度襲った熊本地震が起きました。今年9月6日早朝には、北海道厚真町で震度7という強い地震がありました。近年、地震、猛暑、集中豪雨や台風など自然災害が多発する日本列島です。自然災害と原発事故が重なれば住民の命は守れません。玄海原発も福島第一原発事故並みの大事故が起きない保証はありません。日本は今もなお原子力緊急事態宣言発令中です。福島原発事故から7年半を経過しても、 放射能被害は拡大し続け事故収束の目途はたっていません。いまだに5万人を超える福島県民が避難生活を強いられています。国は、原発事故に襲われた福島県の空間線量の基準を20㍉シーベルト/年と他県の20倍に緩めました。この件について国交渉でも納得いく回答はありませんでした。

 昨年4月24日、山口祥義佐賀県知事は「安全性の確認と住民の理解」が得られたら「再稼働はやむを得ない」と、玄海原発3・4号機の再稼働に同意しました。昨年県内5箇所で開かれた県民説明会では、どの会場でも参加者のほとんどが原発に反対・不安の声でした。伊万里市長はじめ30キロ圏の4首長は住民の声を受け止め、再稼働に反対を表明しましたが、知事はそれを無視して同意したのです。

 国・原子力規制委員会は「審査はするが安全とは言わない」とし、原子力災害避難計画は事故を前提とするもので、住民が求めるものではありません。その避難計画は自治体に丸投げされ、事故を起こす当事者電力会社と国は「支援」する側に回る仕組みとされました。一方的に犠牲だけを押し付けられ、避難計画作成を義務付けられた自治体には同意する、しないの権限さえないことに、不条理さと憤りを覚えてなりません。

 

 私たちは、2016年夏、数ヶ月かけて伊万里市内を戸別訪問してチラシを配布しました。住民の方と話しをすることもできました。「原子力災害と自然災害との違いは、被曝の不安と放射能から逃げなければならないこと」「第一次産業をはじめ、くらしを根こそぎ奪うのが原発事故であること」「原発事故は人災であること」など運動で知った事実を伝えてきました。住民は「私も原発反対。事故起きたら逃げられん」「ドイツも福島後に原発をやめた。日本も当然そうすべきだ。他のエネルギーをどんどん進めればいい」と反対の声を訴えてくれました。
 規制委は5~30キロ圏の住民が避難する放射線量の基準を毎時500マイクロシーベルト、1週間以内で住民を一時移転させる基準を毎時20マイクロシーベルトとしています。しかし、住民は平常毎時0.05マイクロシーベルトの1万倍、400倍という被曝状況下で逃げることになっていることをほとんどの人は知りませんでした。原発事故時には安定ヨウ素剤を服用しなければならないことも、ほとんどの人は知りませんでした。事故が起きれば被害を受ける住民に、原発や放射能の危険について知らされていないことが多すぎると思います。

 

 たとえ事故が発生しなくても、玄海原発は通常の稼働時でもさまざまな放射性物質を環境中に日常的に放出し、住民への放射能汚染と被曝をもたらしています。
 その1つ、水素の放射性同位体であるトリチウムは、基準が非常に緩いので、水や水蒸気の形で大量に放出されています。海水中に放出している液体トリチウムの量は、1年あたり平均約75兆ベクレル以上(『原子力施設運転管理年報』 2011年4月~2012年3月までの実績)にものぼり、玄海原発の放出量は日本一高い数字となっています。大気中に放出されている気体トリチウムの量も膨大だと考えられますが、その量は発表されていません。トリチウムが体内に取り込まれると、体の構成要素となって、放射線を出し、DNAを傷つけます。アメリカでは、正常に運転されている原発から出ているトリチウムが飲み水を汚染し、赤ちゃんや子どもにガンを発生させたとして訴訟が起きていますが、トリチウムによって白血病や脳腫瘍が多発すると言われているのです。
 海や大気中に放出される多種多様な放射性物質は、海の生き物と住民すべての生活環境、生命と健康を確実に破壊します。一企業の経営のためになぜに住民が犠牲を担わねばならないのでしょうか。

 

 福島第一原発事故からの最大の教訓は、もう原発事故は二度と起こしてはならないということです。今、みんなでこの状況を正面から受け止めなければ、再び原発事故の悲劇を招く事になります。
 10万年もの管理が必要な“核のごみ”のツケを、未来の世代にこれ以上押し付けるのは許されません。今を生きる私たちは、原発のない社会を実現するために自分たちでできる活動を続けていこうと思っています。

以上の思いで本日、下記の事項について要請いたします。

 

【要請事項】

 原発の安全神話が崩れ去って7年半。地震や台風などの大災害も相次いでいる今、危機管理は首長の大事な役割の一つです。ところが避難道路や避難所など避難計画に不備がある状態で、住民の安心安全を守ることは可能でしょうか。
 そこで県に対し、住民が安心し納得できるような実効性のある避難計画を速やかに策定するよう、強く働きかけてください。

 

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2018年10月5日 伊万里市長宛 要請書
【要請書】自然災害と原発事故が重なれば住民の命は守れません
住民が安心し納得できる実効性のある避難計画を策定するよう求めます
20181005伊万里市長要請●.pdf
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