【規制庁「火砕流:これ以上調べる必要はない」酷い言葉連発の政府交渉<原発の火山審査を問う/中間貯蔵/避難計画>報告】

【再処理をどこでやるのか「ちょっと分からない」ので、「“第二”中間貯蔵施設」へ搬出!?
酷い言葉連発の政府交渉<原発の火山審査を問う/中間貯蔵/避難計画>報告】


1月24日、「広島高裁・伊方原発差止決定を受けて 原発の火山審査を問う政府交渉&院内集会」が行われ、主催団体の一員として参加してきました。
今回も、国からは酷い発言の連発でした。福島の犠牲を忘れ去り、国民の安全を守る立場から完全に離れ、電力事業者と一体となって原発を推進する姿勢が露わとなりました。

 

 

<以下、現場でのやりとりの報告>
●審査やり直しを求める要請書を提出
交渉の冒頭、火山審査と神鋼データ不正問題を受けて審査の見直しを求める更田豊志原子力規制委員長宛の要請書も規制庁に直接提出してきました。これは、九州各県31団体連名で、佐賀県知事(12月26日)、九州電力社長(1月9日)に提出したものと同じ趣旨ですが、規制委員長宛は玄海規制事務所に提出しようと、仲間が何度も受け取りを求めましたが頑なに拒否されたことから、この場での提出となりました。現地住民に一番近い位置にいる出先機関がこのような姿勢をとることは、規制委の組織理念でいう「国内外の多様な意見に耳を傾け、孤立と独善を戒める」にも反しています。姿勢を改めてほしいと訴えて、渡しました。

 

●規制庁「破局的噴火の発生の可能性はないので、これ以上調べる必要はない」
阿蘇カルデラ破局的噴火(阿蘇4噴火)により10メートルの火砕流が玄海原発30キロ圏に到達していたことについて、規制庁は「火砕流の露頭は確かにあったが、10センチ前後のものもあり、特異なもの。破局的噴火の発生の可能性はないので、これ以上調べる必要はなく、シミュレーションも必要ない」と言い切りました。
審査会合では石渡委員が「もっと先まで流れていったにちがいない。新たな知見の収集に努めてほしい」と発言しましたが、その後議論も一切なかったということでした。「破局的噴火は発生しない」という前提を、広島高裁はまさに問題にしたのに対し、「民事裁判の一つの意見であり、審査をやり直すとは考えていない」の一点張りでした。

 

●規制庁が専門家論文を「研究途中にエイヤと書いたものだ」と軽視
規制庁からの委託研究で大山火山履歴の再検討を行った山元氏が関西電力の噴火規模の評価が過小評価であるとした新知見について、規制庁自身の委託研究であるにも関わらず、規制庁は
「山元氏が直接見たわけではないし、研究途中にエイヤと書いたものだ」と軽視しました。
市民からは「専門家でもないあなたたちが、あまりに不遜でないか。少なくとも、結論が出るまでは稼働させるべきではないのではない。それが規制の基本ではないか」と指摘しました。

 

●初めて聞いた“第二”中間貯蔵施設
市民「中間貯蔵施設の貯蔵期間終了後の再処理はどこでやるのか?」
規制庁「それは...ちょっと分からないですが…」
市民「どこで再処理やるかわからないのに、許可できないでしょう。」
規制庁「私達はあくまで、申請を受けて、適合性審査を審査しているだけ。原子力政策に関することなので資源エネルギー庁に聞いてください。」
その資源エネルギー庁は、「福島みずほ事務所からは今月もう2回も呼ばれているので、出席できない」として、出席を拒否していました!
市民「では、どこへ搬出するのか?」
規制庁「第二中間貯蔵施設ということも…」
市民「第二中間貯蔵?初めて聞いた!」
福島みずほ議員「貯蔵期間が50年といいながら、その後が分からないというのはおかしい。全体像の中の一部なのだから、全体の説明ができない限り、合理的かどうかなんて言えない。」
規制庁「ご意見としてお聞きします。」

現在の核燃料サイクルでは中間貯蔵施設の次は「再処理工場」へ行く計画になっていますが、再処理をどこでやるのか「ちょっと分からない」ので、「“第二”中間貯蔵施設」にいくこともあるんだそうです!
第二の次は第三?永遠に続く「中間」貯蔵施設でしょうか!?

 

●「UPZ全域がいっせいに避難することは、ありえない」
市民「単独発災時でも、要援護者の避難はピストン輸送でというが、どれだけ待たされることになるのか。」
内閣府「UPZ全域がいっせいに避難するという過酷な状態は、福島を見ても我々からするとありえない。」
市民全員「甘すぎる!」

 

●福島での放射線量最大値は毎時91マイクロシーベルトだという関電の虚偽説明
市民「同席していた規制庁はなぜ、その間違いを指摘しなかったのか」
規制庁「それぞれで説明をしていたので、特に反論はしなかった」
市民「正させるべきではないか。関電を指導してください」
規制庁「それはみなさんから関電に質問してください」
内閣府「どういう趣旨で使ったのか、聞いていないので、良いも悪いも...」
会場からの「おかしい!」の声に、規制庁「今、説明しているのだから、聞いてもらえませんか!」と逆切れ。
浪江町から関西に避難した菅野みずえさん「『我々は言う立場にない』なんて、どうしていえるのか。あなたたちは国民の立場に立つんじゃないですか。公僕ですよ。どんな思いで福島事故の被災者が逃げているかわかっているのですか。同じ過ちを繰り返さないために、あなたたちは仕事しているんじゃないですか。情けなくて言葉がないです。」

 

★みずえさんの言葉、官僚たちの胸には届いたのでしょうか…。あきらめず言い続けていくしかありません。
明らかになった国の酷い姿勢を自治体や市民にどんどん伝え、再稼働をなんとしても止めましょう!

ダウンロード
更田豊志原子力規制委員会委員長宛 要請書
20180124規制委要請火山神鋼●.pdf
PDFファイル 323.7 KB

■関連記事

【火山で立地不適!神鋼データ不正は未解明!玄海再稼働中止を!九州電力に要請してきました】

https://saga-genkai.jimdo.com/2018/01/09/a/


◆政府交渉詳細報告:原子力規制を監視する市民の会より

 http://kiseikanshi.main.jp/2018/01/25/11999/

(上記リンクより引用)

 

みなさまへ(転載歓迎)

24日に行われた原発と火山他いついての院内集会と政府交渉について簡単に報告させていただきます。中間貯蔵の項は美浜の会の小山英之さん、避難計画の項は美浜の会の島田清子さんからの報告を挿入しました。

約50人の方にご参加いただきました。ありがとうございました。

 

院内集会は、広島高裁で伊方原発差止の決定をえた仮処分の申立人のひとりである小倉正さんから挨拶からはじまり、差止の決定を拍手でみなで喜び合いました。鹿児島、佐賀、関西からも参加があり、新潟から小木曽茂子さんも参加されました。国会議員は、福島みずほ議員が参加されました。

原発の火山審査、使用済核燃料の中間貯蔵、原発の避難計画のそれぞれについて情報共有を行い、その後、政府交渉(規制庁と内閣府が出席、エネ庁は欠席)を行いました。

後藤政志さんが発言されていたように、規制庁の姿勢は、専門家の指摘も受け入れず、危険かどうかはっきりしないから動かすというもので、安全が確認されない限り運転を認めないとの基本を放棄したものでした。

 

◎原発の火山審査について(相手方:原子力規制庁)

冒頭で佐賀の永野浩二さんから、玄海原発の再稼働中止をもとめる要請書の手渡しが行われました。

 

◆破局的噴火の可能性については従前の説明を繰り返すだけ

・火砕流が原発に到達するような破局的噴火の可能性については、広島高裁のみならず、これまで、火山に関する5つの決定のうち4つで、電力会社や規制庁の主張は退けられています。
・これは司法と専門家の総意であるとして、規制庁に見直しを求めました。規制庁は、噴火ステージ論やマグマだまりの状況などから、破局的噴火が発生する可能性が十分に小さいとする主張を繰り返しました。規制庁が挙げた根拠は、ことごとく専門家から否定され、否定されたことを裁判所が認定したものです。市民側は改めて、審査の見直しを要求しました。
・玄海原発から30キロ地点で10メートル以上の火砕流の痕跡があることが、審査の最終日に報告され、火砕流が原発に到達した可能性について検討することなく、報告を受けたその日に審査を終えていた件については、九州電力がモニタリングを自主的にやるので、確認する必要がなくなったと回答し、到達可能性について検討していないことを認めました。

 

◆大山噴火による大飯原発の火山灰評価は過小評価が明らかに

・規制庁の委託研究による山元孝広氏の論文が、関電による大飯原発や高浜原発の火山灰評価の過小評価を指摘している件ついて議論しました。関電が検討対象としていた大山生竹噴火(DNP)について、山元氏が再評価した結果、原発周辺で30センチの規模となりました。大飯原発の火山灰の想定は現状で10センチです。
・規制庁で火山担当の安池氏は、山元さんは30センチの露頭が京都で確認されたとの論文を使っているが、山元さん自身がこの露頭を見ているわけではないとし、だから6月14日の規制委会合で、関電に露頭を調査するように指示したと説明しました。12月13日には中間報告が出ているということでした。安池氏は、もし30センチの露頭が見つかり、それがDNPであることが確認されれば、再評価のスタート地点となると述べました。
・市民側は、火山灰の大幅な過小評価により、危険な状況にあるかもしれないので、再稼働が迫る大飯原発について、再稼働を止めて審査をやり直すよう要求しました。
・のちほど12月13日の関電による中間報告を確認しました。(非常にわかりにくい場所にあります)以下です。
http://www2.nsr.go.jp/disclosure/meeting/DR_ETS/index.html
http://www2.nsr.go.jp/data/000214222.pdf
http://www2.nsr.go.jp/data/000214221.pdf
・関電は京都市右京区越畑地点で露頭を確認していました。スケッチ図をみると、火山灰の厚さは最大26センチとあります。関電は今後組成などを調査し、最終報告はまとまり次第報告とありますが、スケジュール表には1月下旬とあります。
・山元論文は、DNPよりも噴火規模の大きいDKP(大山倉吉噴火)について、関電が特殊なものとして検討対象から除外したことについて、除外する理由はなくなったとしています。DKPについて再評価を行った場合、火山灰の厚さは50センチを超えると思われます。これについては時間切れで議論できませんでした。

 

◎中間貯蔵施設に関して(相手方:規制庁[エネ庁は欠席])

◆貯蔵期間は何年か…変更申請により50年を超える貯蔵も可能

・貯蔵期間は法的には決められていない。
・キャスクの「設計貯蔵期間」も決められていない。
・むつの施設の場合は、50年で申請が出されており、50年を超えて貯蔵することはない。「設計貯蔵期間」も50年。
・パブコメへの回答で、具体的な貯蔵期間自体を規制要求とはしていなくて、検査などの結果に応じて決めるものというのは、50年の範囲内で、検査等の結果によってはより短くなることもあり得るという意味だ。50年を超えることはない。
・50年を超えて貯蔵する場合は、変更申請が出され、それを審査することになる。

 

◆貯蔵終了後の行き先として「別途中間貯蔵」とはじめて言及

・(1)と(3)は資源エネ庁の領域なのでそちらに聞いてほしい。
・(2)貯蔵終了後の返還の相手方としては、再処理するためという前提で、契約先つまり東電と日本原電に引き渡すとなっている(これは経産省の審査書に書かれているのと同じ内容)。
・そこから先にどの施設に行くのかはわからない。どの再処理工場に行くのかわからない。これは政策的な問題なので資源エネ庁に聞いてくれ。

質問:再処理施設等ということだが、「等」とは具体的に何を指すのか(資料に付けた経産省の審査書に「貯蔵された使用済燃料集合体は再処理等を行い」と書かれている)。

回答:審査の中で事業者は行き先として一つは再処理工場を挙げている、もう一つは「別途中間貯蔵」を挙げている。

すなわち、いわば第2中間貯蔵施設をつくりそこに運ぶことも考えているということ。その場合は「設計貯蔵期間」50年を超えて貯蔵することになる。

福島議員のまとめ:50年終了した後どうなるか、どこの再処理施設に行くのかは資源エネ庁に聞けという態度では中間貯蔵施設の安全性は担保されない。全体的な政策の合理性を明らかにすべきだ。それができるまでは、むつの施設のゴーサインを出すべきではない。

結論:貯蔵期間は法的には決まっていなくて、むつの場合は50年となっているが、その後の行き先施設またはどの再処理工場かは定かでなく、第2中間貯蔵施設をつくってそこに行くこともあり得るが、その場合は設計貯蔵期間を超えることになる。どこにも行き先がなければ、最初の中間貯蔵施設に居座ることになりかねない。

 

◎避難計画について(相手方:規制庁・内閣府)

◆高浜と大飯の同時事故を想定した避難計画はまだ作っていない。「なるべく早
く」(内閣府)というだけ

内閣府は、同時事故時の避難計画については、今年1月に作業部会を初めて開き、それぞれの避難計画をベースに作れるので、全く新しいものではないと語りました。「いつまでに作るのか?」の質問に対しては、「なるべく早く」としか答えませんでした。

事故時に対策本部を置くオフサイトセンターですが、高浜と大飯のどちらに置くのかは
・先に事故が起きた方に
・同時に事故が起きた場合は、避難道路の状況等を見て、「その時になって決める」というだけでした。これは全く意味不明です。

・現在の避難計画でも要援護者の避難手段等は具体的になっていません。大飯の避難計画では、ストレッチャー等をピストン輸送することになっています。これについて、内閣府の橋本氏は「30km圏内全員が避難することを前提にピストン輸送としている。しかし、全員が避難することはあり得ない」などと発言。勝手に甘い想定で「全員の避難はあり得ない」と判断するなど許せません。福島事故の避難を経験した菅野さんは、規制庁のこのような姿勢を厳しく批判されました。

 

◆「毎時91マイクロシーベルトより高い測定値はある」(規制庁)「関電の説明は間違っている。間違ったままで通さないようにしたい」(規制庁)

関電が、京都・滋賀の住民説明会等で、福島事故時の周辺の「最大」空間線量が毎時91マイクロシーベルトと、2011年4月29日の数値を使って説明している問題です。

規制庁は、91より高い測定値があることは認め、例えばとして、文科省の3月15日モニタリング、浪江で330があると答えました。

住民説明会で、このような関電の説明をなぜ黙って聞いていたのか?については、説明会は、関電や規制庁、内閣府等がそれぞれの説明を行う場で、反論する場ではないため、と回答。これに対して、関電のウソの説明を放っておくのか、関電に謝罪して訂正させるべき等々、参加者から批判が起こりました。

やりとりの中で「周辺(5km圏外)で福島事故後の最大値が毎時91マイクロシーベルトという関電の説明はまちがっている」「間違ったまま通さないようにしたい」と確認しました。

住民説明会に同席していた、規制庁福井担当の地域原子力規制調整官の西村氏は、最初に京都で関電がこの話をしたときに、少しおかしいという風に思ったと、広報の担当の馬場氏は話していましたが、公に批判することもしていないため、関電はその後もこのウソの説明を話続けたのです。
「間違った説明のまま通さないように」具体的に関電を指導するように求めました。規制庁がどのように対応するのか、監視しましょう。

虚偽の説明を関電に撤回させるべき、再稼働を認めないようにという質問については、担当ではないので答えられないと。この点については、再度担当部署から回答を得る必要があります。

今回確認した点を、関西・福井の市民や自治体に伝え、ウソの説明を繰り返す関電の再稼働を止めるために、頑張りましょう。

 

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)


■報道

◆佐賀新聞

【規制委に玄海原発の審査やり直し要請 反原発団体】(佐賀新聞2018年1月25日)
http://www.saga-s.co.jp/articles/-/173593


■動画