【安定ヨウ素剤事前配布求める佐賀県知事要請行動】

 

10月5日、安定ヨウ素剤の全住民への事前配布と、説明会の開催を求めて、佐賀県知事と県議会議長に対する要請を行いました。

私達も先週9月28日に30キロ圏の唐津市と伊万里市に対しても要請を行ったところですが、浮彫になったのは動きの鈍い佐賀県の姿勢でした。

その時の報告はコチラ→

https://saga-genkai.jimdo.com/2017/09/29/a/

 

私達の要請に対して、県医務課担当者は「UPZの高齢者や障がい者に事前配布する方向で、できるだけ早くに進めていきたい」というので、「いつまでに実現するのか」と問うと、「いろんな事務があり、5キロ圏を優先して配布したり、避難訓練もあったりで、まだ実現していない」と回答。「理由をいろいろ言うが、命の問題だということを認識していないのではないか」と指摘しました。

また担当者が「あくまで国の指針の範囲でやっている」「国の方針ものと、最大限できることをやっている」と言うので、私達は「政府交渉で規制庁担当者も“自治体が必要性を判断すれば事前配布していい”と言っている。できることすらやっていないではないか」と指摘。担当者は「国がどう言っているのかわかりませんが」などと逃げるので、規制庁に直接確認することを求めました。

そして、「避難訓練で行ったヨウ素剤配布訓練がどうだったのかの検証をすべきだ。再稼働が迫る中、命を守る最低限の備えとしてのヨウ素剤の配布すら行わないのは、犯罪的ではないか。県民の命を守る立場から、ただちに対応してほしい」として、要請と質問に対する文書回答を求めました。

 

「放射性物質の吸入前の24時間以内」に飲まなければ「効果は極めて小さい」と国の解説書に書いてあります。一方で、ヨウ素剤は避難の際に服用指示が出されることになっていますが、5キロ圏外の避難指示は、500マイクロシーベルト、20マイクロシーベルトという高線量に汚染されてから出されることになっており、被ばくが前提となっています。この明らかな矛盾なども再度問い質しました。

 

篠山市の玉山ともよさん達の経験から学び、“しつこく”取り組んでいきたいと思います。


◆報道


  要請・質問書  

安定ヨウ素剤の全県民への事前配布を求めます

~この要請は原発再稼働を認めるものではありません~

2017年10月5日

佐賀県知事 山口祥義 様

玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会

プルサーマルと佐賀県の100年を考える会

玄海原発反対からつ事務所

 

【 要請事項 】

1.全県民に対して、安定ヨウ素剤の事前配布を求めます。

2.安定ヨウ素剤の必要性等について、住民説明会の開催を求めます。

 

玄海原発3・4号機の再稼働が迫っています。

9月3・4日には原子力防災・避難訓練が行われ、実効性のない避難計画の下では住民の命を守れないことが明らかになり、再稼働への不安は高まるばかりです。

私達はこの期間、馬渡島、神集島、加唐島に行き、住民から直接話を聞いてきました。目と鼻の先にある原発に対する不安の声がほとんどでした。安定ヨウ素剤については「聞いていない」「知らない」という声を多く聞きました。配布訓練の行われた加唐島では、医師の説明はわずか2、3分で終わり、一人ひとりの問診もされずにヨウ素剤に見立てた飴玉が配布されました。それまでにヨウ素剤のことをほとんど知らされていなかった住民に対して、あまりに不親切な配布方法でした。医師が常駐していない島もありますが、いったい誰が配布するのでしょうか。安定ヨウ素剤をなぜ飲まなければならないのか、いつ誰からどのような服用指示が住民に伝えられるのか、丁寧な説明が必要です。

そもそも国策によって進められた原発です。事故が起きれば一方的に被害を受けるのは住民です。なぜ一企業の事故によって、私達が被害を押し付けられなければならないのか。なぜ安定ヨウ素剤を飲まなければならないのか。再稼働に同意した知事は、県民の命と健康を守る立場から、県民に対して丁寧に説明し、安定ヨウ素剤を事前配布する義務があります。

私達は再稼働を絶対に認めるものではありませんが、安定ヨウ素剤の全住民への事前配布ならびに説明会の開催を求めます。

※要請事項についても、どのように対応されるか回答を求めます。

 

【 質問事項 】

1.避難訓練時に配布されたチラシには「放射性ヨウ素を吸入する前の24時間以内に安定ヨウ素剤を飲めば90%ブロックする」とあります。また、原子力規制庁『安定ヨウ素剤の配布・服用に当たって』には、「放射性ヨウ素が体内に取り込まれた後に安定ヨウ素剤を服用しても効果は極めて小さい」と記載されています。

①「吸入前の24時間以内」について、県はどうやって知ることができますか。

 

②いつ誰が服用の判断・指示を出し、住民にどのように伝えるのか、分かりやすく教えてください。

市民団体による政府交渉(2016年11月28日)で原子力規制庁の柿埼雄司課長補佐は「服用は原子力規制委員会が判断するが、服用指示について明確な判断基準はない」と述べました。これを踏まえて佐賀県知事に「県として服用についてどう判断し、指示するのか」を問う(今年1月12日付質問書)と、「規制委の判断に基づいて、国が県や市町に指示を出し、県や市町が住民に指示を出す」と回答しました(6月13日付回答)。これでは住民として不安は消えません。明確な判断基準を示してください。

 

③『配布・服用に当たって』では「国からの指示を受けることができない不測の事態の場合等には、地方公共団体が服用の判断を行うことも可能である」と記載されています。不測の事態で、国の指示が来ない時には県として服用の判断・指示をしますか。

 

2.避難計画では「毎時20マイクロシーベルトを超えたら1週間以内に避難/毎時500マイクロシーベルトを超えたら1日以内に避難」(佐賀県「原子力防災のてびき」)というように高い放射線量に汚染されてから避難することになっています。一般の住宅は屋内退避しても外気が入ってきます。放射能に汚染された外気が入ってくるかもしれません。屋内退避している間や、避難指示が出てから緊急配布場所(集合場所、避難経路上、離島診療所、小中学校等)へ行くまでの間に住民が被ばくしないという、具体的な納得いく説明をしてください。

 

3.緊急時に配布する際の、職員、医師、薬剤師等の具体的な配置計画(「場所ごとの担当者名や医師名等)をお示しください。

 

4.昨年12月以降、事前配布について、市町や国といつどのような協議をしてきましたか、具体的な日時や内容をお示しください。

 

【 要請理由 】

1.唯一の放射能予防薬であり、放射能到達前に服用する必要がある

 

原発事故時に放出される放射性物質のうち唯一、放射性ヨウ素だけは安定ヨウ素剤を服用することで体内への取り込みを阻止し、甲状腺ガンを予防することができます。避難訓練で配布された資料には次のように記されています。

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●原子力災害が進んだ場合、甲状腺被ばくを予防するため、安定ヨウ素剤を服用していただく場合があります。

●被ばくの予防効果は服用のタイミングがとても重要となりますので、服用指示があった場合にのみ飲んでください

●安定ヨウ素剤は甲状腺に集積して、後から体内に入ってきた放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みをブロックできます。

●放射性ヨウ素を吸入する前の24時間以内に安定ヨウ素剤を飲めば90%、吸入した後でも8時間以内に飲めば40%をブロックします。    <避難訓練で配布された資料より>

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「24時間以内」や「8時間以内」というのは、住民はどうやって知ることができるでしょうか。手元になければ放射能到達の直前に飲むのは困難ではないでしょうか。

 

2.服用できない方への事前説明が必要

 

服用にあたっての注意事項が、以下のように資料に記されています。

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●なお、次の方には配布しませんので、その旨お知らせください。

①ヨウ素アレルギーのある方

 例)ヨウ素やヨード造影剤に過敏症があると医師から言われた

 例)イソジンなどのヨードうがい液を使って、じんましん、息苦しさ、血圧低下などの過敏症状(アレルギー)が出たことがある

②人工透析をしている方

③低補体血症性じんましん様血管炎のある方、ジューリング疱疹状皮膚炎のある方

④配布を希望しない方          

●服用後、慎重に様子を見ていただきたい方

1.甲状腺の病気(甲状腺機能亢進症、機能低下症)

2.腎臓の病気にかかっている方、腎機能に障害のある方

3.先天性筋強直症の方

4.高カリウム血症の方

5.肺結核(カリエス、肋膜炎などを含む)の方

6.次の薬剤を服用されている方

 カリウム含有製剤(カリウム補給)/リチウム製剤(躁うつ病治療)/抗甲状腺薬、高血圧治

療薬(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤、カリウム貯留性利尿病、ACE阻害剤 

●妊娠している方 原則として安定ヨウ素剤の服用対象です。

●授乳中のご婦人 服用後1~3日程度は母乳の授乳を避けてください。    <同資料>

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これらの注意事項を突然言われても、ただちに対応できません。事前に十分説明し、理解してもらっておく必要があります。

 

3.事前配布の対象を5キロに限定する理由はない

 

国の方針では事前配布は原発5キロ圏(PAZ)の住民だけが対象となっています。しかし、放射能は5キロ圏や30キロ圏にとどまらず、風や天気次第で距離にかかわらず拡散します。5キロ圏に限定せず事前配布する必要があります。

そもそも避難計画は「毎時20マイクロシーベルトを超えたら1週間以内に避難/毎時500マイクロシーベルトを超えたら1日以内に避難」というように高い放射線量に汚染されてからの避難指示となっており被ばくを前提としています。国が避難とヨウ素剤の服用について判断・指示し、国から県、県から市町、市町から住民へと伝えるのにどれだけの時間がかかるでしょうか。ヨウ素剤を備蓄している集合場所などに住民がただちに集まるのも困難です。

離島では医師が常駐していない島もありますが、誰が配布するのでしょうか。

これでは、いざ事故というときにまったく間に合いません。

 最も困難な状況を強いられる離島住民や要援護者、妊婦、放射線への感受性の高い子ども達への事前配布は絶対不可欠です。

 

4.全国で広がる5キロ圏外での事前配布の動き

 

こうしたことから、5キロ圏外であっても事前配布を実施する自治体が全国各地で増えてきています。

島根原発を抱える島根県は30キロ圏の希望者に事前配布を行っています。問診の結果、服用できない人に対しても「優先的に早めの避難ができるよう支援します」と明記していることも重要です。隣の鳥取県においても30キロ圏に含まれる境港市全域と米子市の一部で「持っておきたいという住民の気持ちに沿えるのではないか」(平井伸治知事)として、事前配布する予定です。

東海第二原発に隣接する茨城県ひたちなか市は全域が30キロ圏に含まれますが、「避難においては想像を絶する困難が想定され、事故発生後の避難等を要する緊急時に、安定ヨウ素剤を全ての市民に混乱なく配布することは、事実上不可能」(市ホームページ)として、全住民に薬局配布方式で事前配布を実施しています。

福井県の高浜原発から50キロに位置する兵庫県篠山市では、シミュレーションの結果、原発事故が起きれば高濃度の放射能に襲われることが分かり、全市民を対象に安定ヨウ素剤の事前配布を始めています。

玄海原発周辺においても、原発から最短で8.3キロにある長崎県松浦市鷹島では、住民からの要請を受けて、市から長崎県、県から国へ要請があり、事前配布が実施されています。

福岡県糸島市では、住民からの要請や署名提出なども相次ぎ、30キロ圏の高齢者や障がい者、また希望者に対する事前配布を9月から始めました。

 

5.スピード感に欠ける佐賀県の対応

 

佐賀県においても5キロ圏外の住民への事前配布について要請が相次ぎました。2016年12月6日の佐賀県議会一般質問では、藤原俊之・県健康福祉部長は「高齢者や要支援者などUPZにおいて緊急時に配布が困難と考えられる住民に対しては、他県の事例も参考にしながら、事前配布も含めた配布の方法について検討する」と答弁しました。あれから10か月経ちますが、いまだに検討結果さえ明らかにされず、事前配布は実現していません。

今年9月13日、塚部芳和市長は市議会で、全伊万里市民への事前配布について「喫緊の課題だ。佐賀県はスピード感が欠けている。県が、我々が要望をしないと動かないのは残念だ。早急に対応していただきたい」と県の姿勢を批判しました。

 

6.住民に寄り添って事前配布の実現を

 

今年3月31日、全国の市民団体による「安定ヨウ素剤の事前配布を求める政府交渉」において、内閣府の林田浩一参事官補佐は、離島などでは「自治体が必要性を判断すれば事前配布をしてもいい」、自治体の要望を「国は拒否する権限も、拒否の基準もない。協議します。『証拠』がないからと門前払いすることはない」、「佐賀県から離島も事前配布すべきだ、議論しましょうといったことは上がってきていない」と述べました。

 これを受けて、私達は4月7日に唐津市長、4月10日に知事に対して、「離島住民へのヨウ素剤の事前配布」を求めました。唐津市長からは「県と協議し、離島代表者会議で意見を聞き、検討してく」との回答がきました。その後、離島の区長から「備蓄されている現状さえも知らないから、それをまず知らせたらどうか」という意見があり、市としてチラシを全戸配布したと聞きました。しかし、9月4日に島を訪問した時には、安定ヨウ素剤のことを知らない住民も少なくありませんでした。そもそも安定ヨウ素剤をなぜ飲むのか、いつ飲まなければならないのか、住民に十分説明し、理解してもらうのが自治体の責任です。事故時に突然言われても判断できません。

そもそも、安定ヨウ素剤の配布は、国の交付金により県が調達したものを各市町村に分配する仕組みになっていますが、元をただせば私達の税金です。篠山市は「憲法で保障された人格権を守るために原発事故に備えています」と原子力防災ハンドブックに明記しています。安定ヨウ素剤の事前配布は憲法で保障された住民の権利です。

 


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