【9.9政府交渉報告:熊本地震で「屋内退避」は無理であることが明らかに!しかし規制庁は現場も見ず、従来通りの「屋内退避」方針堅持...「いろいろ検討」の中身は答えず

<9.9政府交渉報告>熊本地震で「屋内退避」は無理であることが明らかに
しかし、規制庁は現場も見ず、従来通りの「屋内退避」方針堅持
「いろいろ検討」の中身は答えず
 

9月9日、全国の市民団体と連携して「地震動評価・耐震評価」「熊本地震を受けた避難計画の見直し」「避難訓練」についての政府交渉を行いました。 市民側は、鹿児島、熊本、佐賀、大阪、京都、福井県おおい町、首都圏から参加、多彩な顔触れとなりました。福島から兵庫に避難された菅野みずえさんも参加。 また、熊本地震を経験した熊本市の勝連裕子さんも参加され、突然襲った2度の大地震の経験と原発事故も重なった場合の恐ろしさを、院内集会と政府交渉において具体的に語っていただきました。
事前集会のあと、地震動・耐震評価にかかわる政府交渉が90分、避難問題にかかわる交渉が110分と続きました。 以下、「熊本地震を受けた避難計画の見直し」に部分についての報告です。 政府の対応者は規制庁核物質防護課3名と内閣府2名でした。

 

●現場も見ず、従来通りの「屋内退避」方針堅持
「いろいろ検討」したという中身は一切答えず
熊本地震では多くの建物が倒壊し、あるいは倒壊の危険にさらされ、住民は野外の駐車場で車中避難、テントでの避難を余儀なくされました。こうしたことから、「地震と原発事故の複合災害が生じた場合に、『屋内退避』を基本とした原子力災害対策指針では住民の安全を守ることはできないのではないか」と問いました。
規制庁の回答は「原子力災害となったら放射能放出前に5キロ圏は即時避難。30キロ圏は屋内退避。屋内退避が困難になったら、近隣の避難所で退避してもらう。そこもだめになったら、別の避難所に行っていただく。それが最も適切」と従来通りの内容でした。
市民側から「規制庁として熊本地震を受けてどんな見直しの検討をしたのか」と問いました。規制庁は「現在の屋内退避の方針でいいとしている」と回答。
市民が「それはどこで決めたのか」を問うと、「いろいろ検討した結果だ」と言います。「その中身はどう検討したのか」とさらに聞いても、「いろいろ」と答えるだけで具体的には回答しません。
あまりにひどい姿勢に熊本から駆けつけた勝連さんが「規制庁は現場をご覧になったのか」と問いました。担当者らは顔を見合わせて、「私は行っていません」と回答。市民から「規制庁としてはどうなのか」とさらに質すと、「規制庁として行っていません」と。勝連さんが続けました。「余震2000回来ている。屋内退避などできません!」
規制庁は「担当者でこういうことだろうということを考えて、決めて、それぞれ関係各方面に確認して、それを上にあげて、田中委員長が屋内退避の方針でいいと国会答弁した」と、何の具体性もないことを話すばかりでした。
市民側は「指針を変えなくてよい」という方針をどう検討したのか担当部署のリストと、それぞれの内容を後で教えてくれと後日の回答を要請しました。

●指針見直しを求める自治体からの声を受け止めない規制庁
滋賀県・京都府・関西広域連合等からは「屋内退避」を基本とした原子力災害対策指針の見直しを求める提言等も出されています。また、原発30キロ圏にかかる全国156県市町村のアンケート(朝日新聞8月4日付http://www.asahi.com/articles/ASJ7S7WCSJ7SPTIL03T.html)では71自治体が屋内退避方針に「不安」と答え、37自治体が指針見直しを「必要」と答えました。
これらの事実を指摘したうえで、「自治体からの要望に国として答える責任があるのではないか」と質すと、規制庁は「災害対策基本法の中で対策は自治体に任されている。各自治体がコンクリート施設をつくるなど対処することになる」「国と自治体では“すみわけ”ができている」と、国の責任を放棄し、自治体にすべて押し付ける回答をしました。
市民側からは「現場を見てください」との批判が相次ぎ、内閣府担当者は「知事からの要望も踏まえ、一般防災とも連携しながら改善していく」とやっと回答しました。

●安定ヨウ素剤の事前配布対象「5キロ圏」の見直しを!
地震との複合災害時には、安定ヨウ素剤の自治体職員による配布は困難になることも熊本地震ではっきりしました。見直しを求めましたが、規制庁は従来どおりの見解を述べるだけでした。

大地震に原発事故が重なったら、屋内退避も困難となり、避難もできません。現在の原発避難計画は破たんしているのです。
避難計画の策定をおしつけられる自治体は「国が責任を持って決めること」だと言いますが、その政府が国民の命を最優先で守ろうとしない無責任さが、今回の交渉でも一層明らかになりました。

3.11の犠牲と教訓、熊本地震の警告から学び、原発避難の困難さを引き続き具体的に指摘し、この政府の無責任ぶりを、市民や自治体にどんどん知らせていきましょう。


■関連リンク

◆<政府交渉報告>原発地震動評価・耐震性/くり返しの揺れ考慮せず!基準地震動計算はブラックボックス!
http://kiseikanshi.main.jp/2016/09/10/99kosho/

◆<政府交渉報告>防災訓練 安定ヨウ素剤「服用の明確な基準はない」
http://www.jca.apc.org/mihama/

◆20160909 UPLAN 原発の耐震性と避難計画 院内集会&政府交渉
・前半(院内集会、政府交渉・地震動)
https://www.youtube.com/watch?v=uc5aaDMpMgk

・後半(政府交渉・避難計画)
https://www.youtube.com/watch?v=VKxzTPbl55g