【篠山に続こう!安定ヨウ素剤事前配布を行った兵庫県篠山市を訪ねて】

【篠山に続こう!安定ヨウ素剤事前配布を行った兵庫県篠山市を訪ねて】
(『玄海プルサーマル裁判ニュース第20号』(2016年5月28日発行)より)

 4月25日は久しぶりに規制庁交渉に参加させて頂きました。 「これが国か?」とメラメラと心の中は前日の怒りの炎が燃え盛る中で向かった丹波篠山市でした。

◆新緑の中の“懐かしい”まち 丹波篠山
 初めて訪れた篠山市はどこか萩市に似た雰囲気のあるどこか懐かしい街並みでした。
 私は原発やプルサーマルの問題と向き合う前に日本熊森協会で野生動物と自然林を守る運動をしていましたので、広葉樹の新緑の森が眼の前に広がる篠山の風景と瓦屋根と白壁の日本建築の市役所庁舎と市民センターの建物には驚きと感動の幕開けでした。
 篠山市は原発から50キロという場所にありながら安定ヨウ素剤の事前配布をスタートしている町です。
 人口は42000人あまり、【原子力災害対策検討委員会】を行政と市民とでつくっています。保育園や学校の先生、介護施設のスタッフそして消防団の団長さん、子どもの父兄など様々な職業・立場の普通の市民に、放射線の専門医そして学識経験者(守田敏也さん)などが加わっています。この委員会の15回目の会合を「避難計画を案ずる関西連絡会」の呼びかけで、福井・兵庫・京都・大阪・鳥取・佐賀・福岡・東京から集まった方々16名で傍聴させて頂きました。始まる前に、副市長さんは面談の時間もとってくださいました。
 委員会は、現在に至るまでの紆余曲折など感じられないほど和気あいあいで自由な発言が続き、まるで私たちの市民運動の会議のような印象でした。

◆安定ヨウ素剤を切り口に、市民が気づいた!
 取り組みの切り口は【安定ヨウ素剤】ですが、それを配布することによって市民が『そんなに危ないの?』と気づかされたようです。安定ヨウ素剤が手元にあるだけで改めてそんな危険なところに自分は住んでいるんだと認識されるわけです。
 当然、次々に「ではあれは?これはどうする?」と別の新しい問題が見えてくるわけです。そして「なぜ一つの電力会社のためにこんな想いをしなければならないんですか?」「生まれ育った故郷を離れないといけないの?」と感じた時に真剣に悩み考えた結果、「我々を苦しめる電気=原発はいりません!」の意識が実感されるわけですね。
 また、作成中の避難ガイドブックには、避難の基本は『とっとと逃げる!』と書かれています。
 これをみた消防団長さん、俺たち団員の命はどうなるの?と気づかれたそうです。消防団員には万が一の時には広報カーで緊急避難などを呼び掛ける使命があります。そこで俺たちはマスクも防護服も必要なんだ!となって市長に要望。すると、「市長さんがすべてを応えてくれた。1200名分の防護服を揃えてくださった。だからそれにこたえるべく懸命にやっています」と胸を張る団長さん。素晴らしいと思いました。

◆「住民の命を守る!」という信念
 安定ヨウ素剤も3年ごとに入れ替えなければならない。そのための費用は?
「無駄になってもいいじゃないか?無駄になって大いに結構」との市長の潔い英断。打算的な考えは『住民の命を守る』という自治体の事業にならない。私たちの地元周辺の自治体の首長にも聞かせたい言葉です。
 それと有事の際のパニック状態の中で安定ヨウ素剤を配布出来るかどうかイメージして欲しいです。さまざまな核種の中で予防可能なのはヨウ素のみ。それなら出来ることを今のうちにしようじゃないか?と真剣に考えた末の決断は、国や県にお伺いを立てたりもせずに「住民の命を守る!」という信念を貫いた上に正々堂々と進んでいるように感じました。

 

◆福岡でも、篠山に続こう!
 早速私たちも玄海原発30キロ圏に位置する福岡県糸島市訪問をスタートしています。介護施設の施設長さんも障がい者施設の管理者さんも思いのほか真剣に聞いてくれます。「すぐそこに介護施設があるから行ってやってください」と繋がっています。ある保育園の園長先生も「私には何としても子どもたちを守り抜く責任があります!子ども達には"生きる力"をつけたいと思っていますが、その子どもを守るために私はいったい何をしたらいいの?」と始まった座談会は4時間越えになり、様々な資料とヨウ素剤の実物のコピーまで取られました。定例の園長会でも話題になっているようです。
 糸島に避難している若いママたちから「座談会をぜひ!」とのお話も飛び込んできました。
 第2第3の「篠山」と続けるように精いっぱい頑張ります。

(小林榮子)
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★篠山市が安定ヨウ素剤事前配布できたのは・・・
・国の方針では「事前配布は5キロ圏内に限り、30キロ圏内は役所や公民館などに備蓄(事故時に配布)、30キロ圏外は備蓄必要なし」
・篠山市は福井県の高浜原発から50キロ圏だが、希望者に安定ヨウ素剤の事前配布を実施。5キロ圏外の自治体で全国初の取り組み。
・兵庫県の実施したシミュレーションで篠山も大量に被ばくする結果が出たことがきっかけに。
・市民の粘り強い活動と、市長のリーダーシップ。
・専門家と市民各層で構成する委員会で3年がかりの論議。
・行政にできることと住民に任せることをはっきりと住民に丁寧にきめ細かく説明。
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