【佐賀市議会12月議会 白倉和子議員の玄海原発避難計画に関する質疑詳報】

12月9日、佐賀市議会一般質問において、白倉和子議員が玄海原発避難計画に関して質問をされました。
佐賀市は玄海原発の30キロ圏外とはいえ、30~60キロぐらいに位置しています。佐賀県の作成した避難計画では、佐賀市は唐津市民4万人を受け入れることとなっていますが、佐賀市民自身が避難する計画はありません。
白倉議員は唐津市民の受け入れ体制の見直し、福祉施設の避難、SPEEDIの活用、安定ヨウ素剤の配布等に多岐にわたって質問されました。
しかしながら、総務部長は市民の命を守るんだという意志の感じられない答弁を連発しました。
以下、質疑のやりとりを報告します。

●避難受け入れ計画見直し 佐賀市総務部長いていません」
白倉:佐賀市は玄海原発事故時に唐津市民約4万人を受け入れる計画だが、概要はどのようなものか。
部長:唐津市民の受入施設は89か所。うち市の施設79か所、県の施設10か所だ。国民保護計画にある「1人2㎡」の面積に基づいて割り出している。たとえば、佐賀工業高校は923人、佐賀市文化会館で5,853人など。
白倉:今の数字は25年度につくられた数字。その後、計画に不備があったとして、見直しがされているはずだがどうなっているか。
部長:見直しのことは佐賀県から口頭で聞いている。唐津市の人口が1%ほど減っているとは聞いている。
白倉:見直しのポイントは?
部長:聞いていません。
白倉:再稼働が迫る中、最後の避難訓練になるかもしれないといわれているのに、把握していないのが不思議でならない!

●受け入れ先住民への周知 部長「県が主導していること。必要があれば知らせる」
白倉:受け入れ先になっている学校長、公民館長などに伝えているのか。
部長:受け入れ人数を出す時に、各施設長にここは避難所になるということを周知していると聞いている。
白倉:施設長に聞いたが、知らないという人が多い。
部長:人事異動があっても引き継がれているとは思うが、そういうことであればもう一度周知徹底したい。
白倉:周知徹底をお願いしたい。市民への周知はどうか。
部長:佐賀県のHP、県民だよりに掲載されている。防災の手引きを全戸配布している。これでできていると考えている。
白倉:自分の家のすぐ近くの施設がどうなっているか、その周知のことを聞いている。
部長:あくまで県が主導していること。市として、もし必要性がでたら、県と協議して周知を進めていく。
白倉:市としての周知を。県に申し入れをお願いしたい。
部長:必要があれば県に申し入れる。

●高齢者福祉施設の避難受け入れ 部長「何から何まで市でできない。数も把握していない」
白倉:唐津市の高齢者福祉施設から佐賀市の施設への避難について、どこにどれだけ受け入れるか把握しているか。
部長:30キロ圏内の施設はそれぞれ計画をつくっていることは聞いているが、詳細は聞いていない。
白倉:市健康福祉課も同席の上、県から説明を受けているので、把握しておかなければならないと思う。問題点を整理すべきだ。
部長:原子力災害は非常に大きいもの。何から何まで市でできない。県が調整して、施設と施設とで詰めていくことになっている。何か困ったことがあれば、対応したい。
白倉:数値の把握は。
部長:数値の把握はしたいと思う。
白倉:それは当然のこと。現時点で把握していないのは解せない。現実には、ベッド数が足りないので、廊下に簡易ベッドをつくったという話もあった。施設関係者からは「人の取り違いが心配」という声も。一義的には唐津市の責任だが、唐津から送り出されて、佐賀市内の施設に避難してきた人の管理責任は誰がもつのか。
部長:送り出すのではなくて、基本的に施設長、看護師も一緒についてくる。避難元の施設が責任をもって対応して、責任をもつ。

●SPEEDIの活用 部長「専門的知識を持たない市が国・県に申し入れる資格はない」
白倉:国は放射能拡散予測システム、SPEEDIを使わないという方針を決めた。佐賀県もそれに追従した。佐賀市民の命を守る立場から、国や県にSPEEDIの活用を要請してもらえないか。
部長:報道では、国が実測値で避難の判断をすると聞いている。私達は専門家ではないので知識をもちあわせていない。専門的知識を持たない市が国・県に申し入れる資格はない。
白倉:私も専門家ではない。しかし皆、福島で学んだのではなかったか。飯舘村の人達も無用な被曝を強いられた。全国知事会もSPEEDIの活用を提言している。資格がないなんて、そんなことは絶対ない!佐賀市民の命を守らなければいけないでしょう!

●モニタリングポストの設置
白倉:実測値による判断ということだが、佐賀市はどこにモニタリングポストがあるのか。
部長:佐賀市内の3支所に佐賀県から配備され、県環境センターにもあるので、計4か所にある。毎月1日に空中放射線量を測っている。センターは毎日出している。測定値は佐賀市のHPに公表している。
白倉:数値はHPでは分かりにくいところにある。見えやすいようにしてほしい。月1回測っているというが、佐賀市も常時測る必要はないか。
部長:緊急時に使うものとしている。普段は市民への周知としては環境センターの1つで充分。
白倉:すべてについて常時設置へ話を進めていきたい。

●スクリーニング 部長「避難訓練時のスクリーニング訓練は見ていないので、分からない」
白倉:避難訓練でスクリーニング訓練もあったが、どうだったか。
部長:私はスクリーニング会場とは別の場所にいたので、当日の様子を見ておりません。
白倉:それでは困る。除染ということで車体を水で洗い流したが、学校のグラウンドを放射能で汚すことにならないか。
部長:校庭でやることは望ましくないが、あくまで緊急時なので、仕方がない。他のいい場所がないか、佐賀県と協議していく。
白倉:これは佐賀市民を守ることであり、控え目でなく言ってほしい。今後、県とどのように向き合うか。
部長:今回の訓練の問題点について検証をまとめて佐賀県に伝えたいと思う。

●安定ヨウ素剤配布 部長「義務はないので、考えていない。他の市町と足並みをそろえたい」
白倉:(安定ヨウ素剤の現物を掲げながら)高浜原発50キロの兵庫県篠山市ではヨウ素剤5万人分を購入し、事前配布するという。佐賀市も同じような位置だ。ヨウ素剤を市民に配布してほしい。
部長:30キロ圏外は備蓄の義務はないので、今は考えていない。考えるとすれば、県内の他の市町と足並みをそろえたい。
白倉:足並みをそろえるのではなくて、まず先頭立ってやってほしい!
部長:備蓄している自治体のことは研究したい。

●最終処分や中間貯蔵に関する見解 市長「原発稼働はやむをえない。安全性と核のゴミの問題はちゃんと…」
白倉:九電が敷地内に乾式貯蔵施設を検討するという話が持ち上がった。最終処分や中間貯蔵に対する市長の見解を。
市長:びっくりしたが、詳細はまだ分かっていないが、これから注視していきたい。
白倉:市長はかねがね、再稼働は安全性と最終処分方法が決まることが条件だと言っていたが。
市長:以前と考え方は変わっていない。原発にたよらない電源の確保が一番いいが、化石燃料の問題もあり、今ある原発を動かすのはやむをえないと思うが、安全性と核のゴミの問題はちゃんとしなければならない。

◆◆傍聴の感想
 佐賀県の計画では佐賀市は唐津市民を4万人受け入れることになっており、この不備は私達も県や各市町に昨年来指摘してきたところですが、現在「見直し」が進められています。
人の命と、いつまで続くか分からない避難生活を受け入れる以上、責任をもって体制をつくらなければなりません。また、困難な点があれば唐津市にも実情を伝えて、「現状では責任を持って受け入れることができない」と県や国に対して率直に申し出るべきです。
 そして、佐賀市民自身の避難は市民の命の懸かったことですから、「国・県に申し入れる資格がない」などという市の認識は誤っています。行政の姿勢をただし、本来の「地方自治」を実現するためには、私達住民が声をあげ、行動していくしかありません!
 今、私達はモニタリングポストの設置・観測・周知体制などについて徹底的に調べていますが、いざという時に役立たないのでは?という問題点がたくさん見えてきました(報告は別の機会に譲ります)。
各市町、各地域で避難計画を1つ1つ検証し、問題点を自治体とも共有しながら、そもそも大がかりな避難計画(しかも、被ばくが前提!)が必要な原子力発電という馬鹿げた発電をただちにやめるような世論をつくっていきましょう!