【日本一酷い川内原発避難計画!~全国の集いの報告~】

日本一酷い川内原発避難計画!
「7.26原子力防災を問う全国の集い-in-かごしま」報告

7月26日、鹿児島市にて「原子力防災を問う全国の集い-in-かごしま」が行われました。
目前に迫る川内原発再稼働の阻止、そしてすべての原発の廃炉へ向けて、避難計画問題を中心に実践的な報告・交流が行われました。
100名近い市民が参加、4時間にわたるプログラムを最後まで熱心に共有しました。
夜の交流会は作戦会議となり、翌日、ただちに行動にうつしました。
川内原発30キロ圏の出水市では、集いを受けて翌日、出水市民9人を含む15人で避難計画に対する質問要請行動を行い、再稼働前に説明責任を果たすよう強く交渉しました。
迫る川内再稼働を止めるため、まだまだやれることはあります。
すべての原発なくすためにあらゆる手を尽くしましょう。
行動するのは、今です!

以下、集いの詳細報告です。

第一部 崎山比早子さんのお話
冒頭、FoEの満田夏花さんから福島原発事故の現状、避難者支援の打ち切りなどの酷い政策の報告があった後、「放射線被ばくと甲状腺疾患」と題して、崎山比早子さん(医学博士、元国会事故調査委員会委員)からお話いただきました。

チェルノブイリ原発事故後のウクライナやベラルーシでは甲状腺がんの発病が増大した。放射性ヨウ素を体内に吸収し甲状腺に蓄積したことが理由と考えられる。
・安定ヨウ素剤を飲むことは放射性ヨウ素剤にのみ効果がある。
・放射性ヨウ素が取り込まれる直前までに飲めば阻止効果が90%、(取り込まれた)2時間後までなら80%、8時間後なら40%と下がり 、24時間後では7%しかなくなる。
まず飲んでから避難することが大事で、(鹿児島県の計画のように)避難所に着いてから飲んでも効果があまりない。手元に持っておくのが一番よい。
・福島原発事故でヨウ素剤が服用されなかったのは--事故前に住民に情報を伝えておらず、各戸配布もされていなかった、国の指示が市町村長に届かなかった(FAXを確認できたのが数日後など)、福島県知事が服用指示を出さなかった、国・県の指示を待たずとも市町村長の独自判断もできたはずだが副作用を恐れるなどで服用指示を出さなかった。
独自判断で服用指示をしたのは三春町(50キロ圏)のみだった。
・副作用はきわめて稀であり、ヨウ素過敏症や甲状腺機能異常症の人は普段から医師に相談しておけばよい。服作用が起きても、医師に 相談し、服用をやめれば元に戻る。JCO事故の時は「住民の不安をかきたてるから」との理由で配布されなかった。
・放射線に安全量はなく、放射線がDNAにあたって傷つくと、遺伝子の変異による危険性が蓄積していく。
100ミリシーベルト以下でも発がんリスクが高まることが証明されている。
・国会事故調が明らかにした緊急被ばく医療体制の不備、防災体制の不備、避難は不可能、再稼働をすれば福島と同等あるいはそれ以上の災害が予測される、福島事故は終わっていない、終わる見込みもない・・・そうした中での川内原発の再稼働はあり得ない。
図表を示されながらの、明快なお話でした。

第一部後半 鹿児島市の医師の青山浩一さんからのお話
ヨウ素剤 配布状況など鹿児島県の避難計画に杜撰さをお話いただきました。
・10キロ圏外の病院・要援護者施設について、事故時にコンピュータの「調整システム」で避難先を「調整」することになっているが、具体的には何も決まっていない。
鹿児島県保険医協会で行った医療機関へのアンケートでは、30キロ圏内外ともに施設の避難計画を作成した所はわずかであった。
・ヨウ素剤は5キロ圏のみに事前配布したが、30キロ圏には市役所などに保管しているだけで、配布方法と場所は未定である。
 3歳未満の子どもは粉末をシロップにして飲ませるため、5キロ圏でも事前配布していない(避難先・集合場所で飲ませる)
 安定ヨウ素剤は1丸あたり5.6円(3~13歳は1回1丸。13歳以上は1回2丸)なので、全県民用 に備蓄しても1747万円。なぜそれができないのか。
第二部 川内原発避難計画、他地域との比較
第二部では、鹿児島いちき串木野市、出水市からの避難先になっている熊本県水俣市、福井原発を抱える関西、そして佐賀から、ヨウ素剤、複合災害時の孤立集落問題、避難用バスの運転手の被曝問題等の報告がありました。
福井県の高浜原発事故時の避難先となる兵庫県篠山市は原発から50キロ離れていますが、全国で初めて市独自で市民にヨウ素剤を事前配布することになったという画期的な事例が紹介されました。他にも30キロ圏外であっても独自に備蓄を検討する市町が増えていることが報告されました。住民の命を守るために、県独自、あるいは市独自の判断で、ヨウ素剤の備蓄、事前配布はできるのです。
水俣市では土砂災害危険区域にかかるために「避難所」からはずれた施設が、避難元の出水市の原子力防災マップで依然として掲載されたままになっている問題、災害時に孤立する可能性のある出水市の集落の様子が報告されました。

佐賀からは、ヨウ素剤について、以下の点を報告しました。
・ヨウ素剤が5キロのみ事前配布、30キロ圏については伊万里市が市内全域の小中学校と公民館に配備し、配布体制を決めている。鹿児島と比較すると、これでも進んでいる。
・伊万里市長が議会答弁で「5キロと30キロとで差をつけるべきでなく、事前に戸別配布できるように県にお願いしたい」と述べている(現実には実現していないが)。
・前の佐賀県知事が議会答弁 で「30キロ圏内に配布しないのは誤用があるといけないからだ。5キロ圏内はどこに避難するかなど避難計画の情報を周知しているが、30キロ圏の人はそういう基本的な事柄を周知できないので、ヨウ素剤の事前配布はするべきでない」などと発言していた。これは本末転倒であり、行政としての責任放棄だ。
・ヨウ素剤の服用について、佐賀県防災計画では「国の指示又は県、関係市町の独自の判断」でと書かれているのに、県市町の議会答弁などでは「独自の判断」が言及されていない。
崎山さんからお話があったような「福島原発事故の教訓」が何も活かされておらず、無視されているのです!

会場とのやりとりでは「避難計画なんか無意味だ。再稼働にとにかく反対だ」の意見が出ましたが、アメリカ・ショーラム原発を、住民が避難計画の杜撰さを指摘し続ける運動をしたことで廃炉に追い込んだ事例を直接に見聞されてきたアイリーン・スミスさんが紹介し、避難計画に取り組む意義を訴えました。
佐賀の経験として、避難所がぎゅうぎゅう詰め状態で数合わせの机上計画であることを事細かに指摘していったことで伊万里市の避難先が99%見直されたことなども紹介しました。
このように問題点をひとつひとつ明らかにしていく中で、避難計画が被ばくを強いる被ばく計画であると感じずにはいられません。避難計画にしっかり取り組むことは「原発を動かすな!」という世論をつくる鍵になります。

●第三部 火山審査と老朽化審査について
原子力規制を監視する市民の会の阪上武さんから、規制委員会の法規を無視するほどの再稼働ありきの姿勢を批判、九電や国に対して粘り強く説明を求めていこうという提起がされました。
最後に「 本日、私達は川内原発再稼働をなんとしても止めたいと全国から集った。命とふるさとを奪う再稼働に絶対反対する。福島原発事故がなかったかのような再稼働推進を到底許すことはできない。避難計画、火山、老朽化などの山積する問題について、国・鹿児島県・九州電力に説明責任を果たすことを求める」とした「集い宣言文」を採択しました。
4時間の集いの後は、オーガニック・レストラン『作楽』にて、美味でヘルシーな料理をいただきながら、作戦会議を行いました。
●「集い」を受けて、翌27日にはただちに行動
川内原発30キロ圏の出水市役所へ。
出水市の永池さんの緊急の呼びかけに市民9人が駆けつけ、集いに参加した各地からの6人とあわせて15人で質問要請行動を行いました。
しつこく粘り強く行動すること、再稼働を止めるチカラはここにあります!

永池さんからの報告を下記に抜粋させていただきます。

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今日は、出水市の安心安全推進課の課長らにお時間を取っていただき、昨日の集いのメンバーの美浜の会の島田さん、福島原発老朽を考える会「フクロウの会」の阪上さん、玄海原発プルサーマル裁判の会の永野さん出水市民9名、水俣から議員1名を含めて2名、芦北から1名で、この間の原子力防災マップのことを中心に、ヨウ素剤配布の件、スクリーニングの件、避難時のバス手配の件、孤立集落の件などを30分で逃げ切ろうとしている本田課長をひっぱって、一時間程意見交換しました。

新たに、再稼働前に時間を取ってくださる約束を取り付けて終了となりました。
日時は、明日、電話にて伝えてくれるそうです。
皆で食い下がって、食い下がって、とりつけた約束でした。
原子力防災マップの件で、新たにわかったことなのですが、水俣市は、三月に避難所の策定を災害対策基本法に乗っ取って、変更していました。
でも、出水市は、その確認もしないまま、以前の避難所を記載したままで、四月に原子力防災マップを広報と共に各戸配布しています。
私達のこの指摘があるまで、そのことを知りませんでした。
さらに、もし、原子力災害が起こった場合、市民は、そのマップを見て避難するのだから、大変なことになるのでは?という私達の意見に対して、本田課長は、なんと、県の調整システムがあるから大丈夫です。さらに、複合災害がなければ問題ないとまで発言しました。
 複合災害がない原子力災害って確率が限りなく低いと思うのですが、、、
また、備蓄用品のことなども考慮されていない様子には、驚くのみでした。
どこまで、語り合っても平行線のまま、、、どの問題も。
三人の小さな娘さんを持つ若いママが子供のことが心配です。せめて、備蓄している安定ヨウ素剤は、お金がかからないのですから配布してほしいと言うと、それは担当課が違うので答えられないと、市民の不安と真摯に対面しない。
県の調整システムについて、どういうものなのか?と質問しても、確認していない。で終わり。
そんな調子の一時間でしたが、今日の話し合いを次回に繋げていくこと。たえず、チェックしていくしか道はないと思ってます。
あきらめたら、そこでおしまいですから。
ただ、嬉しかったのは、急な呼びかけに応じて出水市民が来て下さったことでした。
こうやって、ひとつ、ひとつの事例について、煮詰めていって、本当に避難計画などできないんだ。
その前に再稼働なんてしてはいけないのだと自治体に理解してもらう。
県や国にばかり向けている頭を、本来のあるべき姿、市民の安全を守るということに対して自覚を持って貰う為に、こんなことやってる。
原発さえなければ、こんなことに費やしている時間、全部、田んぼにいたいよ。
原発いらなーい‼️


●鹿児島県庁などへ申し入れ
26日の集いで共有した問題点を踏まえて、川内原発をめぐる問題点について関係各所へ申し入れ等を行いました。


・鹿児島県原子力安全対策課へ申し入れ
集いを主催した全国の市民団体のメンバー8人が、鹿児島県原子力安全対策課へ申し入れを行いました。与えられた時間はわずか10分。
「宣言文」を読み上げの上、こちらから、関西では30キロ圏外でもヨウ素剤を事前に戸別配布してる自治体もあるなど他県の状況を説明し、鹿児島県の対応が遅れていることなどを指摘しました。そして、「福島原発事故では避難が遅れたために被ばくを強いられた。プルームが通過する前にヨウ素剤を飲んでおけば少しは放射能防御できたはず。そうした教訓をくんで、最低限のことをやってほしい」「今のような状態のままでの再稼働はしないでほしい」と強く求めました。

 県は2人が対応しました。市民が代わる代わる発言するのを、担当者は相手の顔も見ずにずっと下を向きっぱなしでノートに書き留めていたので、青山さんは「私達と目をあわせて、話を聞いてください」と訴えました。担当者は最後に「話は聞きましたので、上司に伝えます」とだけ発言しました。

・鹿児島県庁記者室にて記者会見
 ヨウ素剤の実物を見せながら説明したのを皮切りに、各メンバーから少しずつ訴えをさせていただきました。

・鹿児島県薬務課
原子力安全対策課とは違って、課長以下4人が対応しました。
こちらから「5キロ圏外には事前配布をしないということだが、それでは間に合わない。被ばくの前にヨウ素剤は飲まないと意味が薄れる」という話をした時に、内閣府のマニュアルを示しながら「いや、放射性物質の放出前に避難することになっていますから」というので、「それは5キロ圏内の話でしょう。5キロ圏外は実測値で500μSv/hです」と指摘しましたが、「いや、ですから、放出前に避難とここに書いてありますので」と。ヨウ素剤はタイミングが非常に重要なのに、その前提となる避難の条件のことを知らないようで、びっくりしました。
事前配布、幼稚園・保育園への備蓄、3歳以下の子どもへの対応等について要請しました。

・鹿児島市危機管理課
鹿児島市(30キロ圏に一部がかかる)危機管理課も訪れ、30キロ圏外へのヨウ素剤配布等、他県の状況を伝え、市民の命を守るよう要請しました。
「30キロ圏外についても何もしないということではない」とは言っていました。

KTSテレビ
http://news.ktstv.net/e58512.html
原発の再稼働に反対する市民グループのメンバーが27日、「鹿児島の原子力防災は、他の県より遅れている」と指摘しました。県に申し入れを行ったのは、反原発を掲げる鹿児島や東京、佐賀などの市民グループのメンバーです。
メンバーは、「安定ヨウ素剤の事前配布は原発から5キロ圏内に留まっていて、実際に事故が起こった時、5キロ圏外の住民は、安定ヨウ素剤を服用できないのではないか」などと指摘しています。
その上で、高浜原発周辺では、30キロ圏外でも事前に配布している自治体もあることを例を挙げて、「鹿児島の原子力防災は、他の原発立地県より遅れている」と批判しました。その上で、「そのような県で原発 の再稼働が進められることは許されない」として、再稼働に反対する意思を改めて示しました。


朝日デジタル「避難計画に不備、中止を」 市民団体申し入れ」2015年7月28日
http://www.asahi.com/articles/ASH7W6Q4JH7WTLTB01Y.html
「県内外の市民団体メンバーが27日、九州電力川内原発(薩摩川内市)の再稼働中止を県に申し入れた。県側に手渡したのは、26日に鹿児島市で開かれた「原子力防災を問う全国の集い」で採択した宣言文。住民の避難計画に不備があることを挙げ、再稼働しないよう求めている。この日、「川内原発30キロ圏住民ネットワーク」の高木章次さん(64)らが県原子力安全対策課の担当者に宣言文を提出した。集いの討議をもとに、バスによる住民避難の具体的な方法が定められていないことなど問題点を列挙。「誰も実効性を検証していない」と県の姿勢を批判する内容だ。同席した玄海原発(佐賀県)の再稼働に 反対する市民団体代表の石丸初美さん(64)=佐賀市=は「全国に先駆けて再稼働させる鹿児島県は責任をもって取り組むべきだ」と話した。」