原子力防災指針、国へ直接交渉!30kmの外側でも避難認める

2013年1月16日(水)、参議院議員会館にて、原子力防災指針に関する院内集会と政府交渉が行われ、私達も参加してきました。

北海道、宮城(石巻)、新潟、福井、島根、大阪、京都の市民団体、佐賀からは玄海原発プルサーマル裁判の会代表の石丸と於保です。

会場は100名近い参加でした。福島みずほ議員にも顔を出していただきました。ありがとうございました。

 

私たちは、緊急時防護措置準備区域(UPZ)30Kmでは狭すぎる、年20mSvは高すぎるなど要望しました。

 

原子力規制庁は、「UPZの範囲外でも避難の可能性あり」と回答しました。

 

福島原発事故後の避難状況の検証や、被災者からのヒアリングなども行わず、国が決めた3月18日の期限が迫っているとしてか、国の拙速すぎる判断は、「命より事務処理」としか思えません。 

全ての命を奪い去る原発はいりません。

 

■交渉相手方:原子力規制庁 原子力防災課 課長補佐 山口氏、岩澤氏


「福島事故を無視した「避難基準」は無責任」 裁判の会代表 石丸初美

(2013.2.3追記、裁判ニュースNo.8より)

 

 1月16日、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)/国際環境団体 FoE Japan/グリーン・アクション/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)の呼びかけで「原子力防災指針に関する院内集会・政府交渉」が行われました。

 裁判の会でも昨年末から、玄海原発の放射能拡散予測のシミュレーションを持って、佐賀県内の自治体などを訪ねてきましたが、今回の交渉に裁判の会から二人(石丸、於保)が参加しました。

 北海道、新潟、宮城、福井、島根、佐賀など立地県、福島から避難されている方、そして首都圏から120名以上が参加し、参議院議員会館の部屋は満杯でした。佐賀出身で関東在住の方にも呼びかけをしましたら駆けつけてくれました。「初めてだったが参加してよかった。今後関東にいてできることをしたい。友達も交渉に誘います」と運動の輪を広げる事ができました。国や県や九電との交渉は、実情がはっきり解るところです。皆さんの知り合いにも、ぜひ交渉の時に参加を呼びかけてください。

 原子力規制委員会は今、原発事故が生じた時の原子力災害対策指針(防災指針)について、避難基準を急ピッチで検討しています。現在の案では、福島事故の避難政策の検証もなく、事故後数時間は毎時500μSv(7日間50mSv)、その後は毎時20μSv(年20mSv)と高い避難基準が設定されています。しかし、原子力規制委員会による拡散シミュレーションでは、100mSv/週(IAEA基準)と異常に高い基準で、それでも30kmを超える地点が多くあります。

 UPZ(緊急防護措置準備区域)は30kmのままですが、あまりに狭すぎます。計画的避難区域とされた飯館村は福島第一原発から40〜50kmで、避難指示の遅れが村民々に無用の被曝を強いました。こうした実状は、今回の避難基準には何一つ反映されていません。それどころか、防災指針で問題の多い年20mSvを正当化してしまいます。この問題の追及こそが、福島原発事故による住民の被曝の責任の追及でもあり、原発の存在の根本そのものを問うことになると思います。

 

 今回の交渉は原子力規制庁原子力防災課の二名が対応しました。

原子力防災課課長補佐 山口徹朗氏 /同課専門職  岩澤大氏

 

●福島の検証なしでいいのか?

 避難基準の見直しに際しては福島原発事故の検証が不可欠です。しかし規制庁は「福島で適用された基準の妥当性についての検証は行っていない」「住民からのヒアリングは復興庁が行うので、規制庁としては行うつもりがない」。

 会場からは「被災者からのヒアリングを最優先に行うべきだ」「それまでは指針を定めるべきではない」といった声があがりました。

 規制庁は「事務手続き上、3月18日までと決まっているので、それまでに策定しなければならない」「間に合わない。その後、問題が出れば見直せばよい」。(※2012年11月16日、原子力規制委員会設置法の一部『原子力災害対策指針に基づき地域防災計画を作成することを定める規定等』の施行期日を今年3月18日と閣議決定)」

 会場からは「勝手に決めておいて、命と事務手続きとどっちが大事だ」という声があがりました。

●規制庁は、避難の範囲と概ね30キロメートルのUPZとは同じではないという答えでした。

 新潟からの発言で、例えば新潟が50キロメートルで防災計画を立てることについて、「国としては否定しない」と認めました。そして30km以遠では「拡散予測の信頼性に問題がある」などと都合が悪くなると、筋が通らない無責任な回答でした。防災対策の範囲を30キロ圏内になんとか押し込めてしまおうとするために、矛盾が出ているのです。

●各自治体の防災計画が100mSv/週を元にしていることについても、規制庁は「不十分」という言い方をしました。規制庁案が50mSv/週なのだから当然です。

 

●上記の結果をふまえて、以下の点を確認しました。

原子力防災指針に関する政府交渉での確認点

【1】規制庁は、福島原発事故の避難の実態等について具体的検証は行っていない。

【2】避難・防災の範囲と、UPZ「概ね30km」は同じではない。

【3】各自治体の防災計画案は週100mSvを基にしているが、規制庁のOIL(避難)基準案と比べると「不十分」。

【4】妊婦、子供の基準はまだ具体的に決まっていない。

【5】OILの基準値では、プルーム通過そのものによる外部被ばくと吸引による影響は考慮していない。

【6】規制庁シミュレーション(週100mSv)について、「97%値方式」での評価であり、最も被ばくが厳しい100%値を採用していない、などの問題がある。

【7】規制庁シミュレーション(週100mSv)の「すそ値」(100%値)は公表に向けて検討する。

【8】規制庁案のOIL基準である週50mSv、年20mSvについて、各原発毎に、97%値と100%値の場合のそれぞれの地点を示した資料については、公表の方法や時期を検討する。

 

 私たちは、各自治体に情報提供も含めて訪問していますが、防災対策については、多くが国の決定待ちです。しかし、今回規制庁は「地域防災は地方自治体が決めることだ」「目安として」「参考となれば」と責任はあくまで自治体にあると回答しました。この交渉結果を自分達の自治体に伝えていきましょう。みなさんの町にもぜひお話にうかがわせてください。そして、玄海原発の再稼働をなんとしても止めましょう!