【複合災害時、玄海原発30キロ圏内で66集落が孤立】

佐賀県内では唐津市の29集落が孤立

救助ヘリ着陸スペース「なし」半分以上

放射能からどう逃げればいいのか


5月25日、毎日新聞は、全国の原発30キロ圏内で、複合災害時に孤立する集落が2318集落あると報じました。

http://mainichi.jp/select/news/20150525k0000m040136000c.html


玄海原発から30キロ圏内では、佐賀県、長崎県、福岡県で66集落が孤立するおそれがあり、うち40集落でヘリの着陸スペースがない、と報じられました。

内閣府から取り寄せたデータから、玄海周辺の集落について詳細に検証してみました。


【佐賀県内の玄海原発30キロ圏では29集落が孤立】

佐賀県の30キロ圏内には29集落ありました。うち農業集落が20、漁業集落が9です。

すべて唐津市内で、30キロ圏の玄海町と伊万里市にはありませんでした。

●唐津市七山村は全16集落が孤立

唐津市の山間部にある旧七山村地域(人口約2200人)は、全16集落に孤立のおそれがありました。漁業集落では7つの離島すべての8集落と、呼子町の1集落に孤立のおそれがありました。


●ヘリコプター駐機スペースは半分以上が「ない」

救助用ヘリコプターの駐機スペースは「ある」が13集落、「ない」が16集落。特に農業集落では25%の5集落に駐機しかスペースがありません。


●飲料水備蓄「ある」は4集落のみ、食糧備蓄は「ある」はゼロ

当該集落内の避難施設の備蓄状況も調査されていました。飲料水は漁業集落4つのみ備蓄が「ある」。農業集落では飲料水も食糧も備蓄はまったくありません。医薬品、毛布、防水シートなど生活備品などは29集落すべて「ない」でした。


●30キロ圏外の避難受入先が孤立しているケースも佐賀県内の30キロ圏外で孤立するおそれのある集落は全部で158集落(農業集落153、漁業集落5)ありますが、この中に原発事故時の避難受入施設のある集落があります。有田町では、伊万里市からの避難先となっている避難所のうち7つが、それぞれ孤立する可能性のある集落にありました。

他の市町でもそのような避難所・集落がないか確認する必要があります。


●福岡県内

糸島市の30キロ圏内では孤立可能性のある農業集落4集落ありました。漁業集落はありません。※3


●長崎県内

30キロ圏内で33集落ありますが、地図に落として個々に調べる必要があります。


【孤立集落の住民の命をどう守るのか】

複合災害が発生して孤立した場合の避難はどのように行うのでしょうか。

放射能屋内退避指示と、土砂災害等の避難指示が同時に出た場合はどのように対処したらいいのでしょうか。

水や食料の備蓄がない施設に屋内退避することはできるのでしょうか。

これまで土砂災害等の危険区域にある避難所の問題を取りあげてきましたが、同じく複合災害を想定した時に起こりうる大問題です。


原子力災害は自然災害との複合災害で起きる可能性が高いのです。孤立集落の住民の命をどう守るのか、放射能から逃れて安全な場所に避難できるような具体的な対策が打たれない限り、原発の再稼働はありえません!

自治体に確認、要請していきましょう!


※1 2014年10月22日付で 内閣府より記者発表された≪「中山間地等の集落散在地域における孤立集落発生の可能性に関する状況フォローアップ調査(第2回)」の結果について≫から抽出。

本調査は、2004年新潟県中越地震において多数の孤立集落が発生したことを受け、全国の孤立可能性のある集落数等を把握することを目的として、平成17 年に初めて実施。農業集落17212集落、漁業集落1933集落を調査。


※2 駐車スペース 災害時に緊急に使用可能と認められる場所(平坦な原野、畑等)を駐機スペースとして想定。30m×30m以上。


※3 福岡県糸島市の孤立集落が30キロ圏内かどうかは、緯度経度データから原発との距離を計算。

http://www.benricho.org/map_straightdistance/

孤立するおそれのある玄海原発30キロ圏内集落(佐賀県と福岡県の33集落)

※4 緯度経度データから、下記ソフトを使って地図に落とした。

http://ktgis.net/gcode/lonlatmapping.html